2999年1月1日火曜日

はじめに

このブログについて


ポケットモンスターシリーズの世界観について、1人のファンが非公式に考えたことをまとめていくブログです。自身の意見の全容がわかるように置いておくのが開設理由です。

主にオリジナルであるゲーム(株式会社ゲームフリーク開発の本編)を中心に、派生ゲームやTVアニメ、映画から得られる情報などを補足とし、考察していきます。

元来は趣味の二次創作活動において、より原作に忠実なポケモンの生態描写などを心がけるために始めた考察の習慣ですが、現在はほぼそれ自体がメインです。
2018年時点では、ポケモン図鑑記載の"たかさ"に最もフォーカスしています。

2020年、PokemonHOMEに最新世代までのたかさ比べが復活したため、グリッドをひいてまとめました。



2023年3月18日土曜日

サトシとレッドの分岐点


TVアニメ『ポケットモンスター』でこれまで冒険を続けてきた少年サトシが、今年2023年の最終章にて、主人公という物語のフォーカスから外れるらしい。

マサラタウンにさよならしてからどれだけの時間経っただろう……26年も!?

一方同じくマサラタウン出身の主人公にレッドという人物も存在する。ゲーム『ポケットモンスター金・銀』(以下金銀)の裏ボスとして立ちはだかる「前作主人公」像が有名だろう。

最初の作品『ポケットモンスター赤・緑(以下『赤緑』)が発売されたのは 1996/2/27。
TVアニメ化し日本国内でスタートしたのは1年後、1997/4/1。
アニメのサトシゲームの主人公から派生した存在である。

ということは、レッドサトシの原作?…と単純な話でもないようだ。「主人公」からのキャラクター派生ラインを整理してみたのが1枚目の図である(3/28修正:『ミュウツーの逆襲Evolution』の3DCGサトシ追加、アニメ『XY&Z』からゲーム『サン・ムーン』へのサトシゲッコウガの影響を表す矢印追加、見やすさの調整)。

スマホ向けアプリ『Pokémon Mmasters EX(以下ポケマス)』3周年でサトシレッドが邂逅したのも記憶に新しい。この2人の主人公、そしてアニメとゲームの関係を振り返ってみたい。

ゲーム『ポケットモンスター』の主人公は?

原作のゲームの主人公には 実は決められた名前がなく、ゲームを遊ぶ人が名前を自由に決めることができる。本名を入力しても、レッドサトシになりきっても良い。

いくつかのゲーム公式サイトでは主人公を以下のように紹介している。
プレイヤーであるキミは、主人公となって『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』の世界へと飛び込み、冒険することになります。 
プレイヤーであるあなたの分身であり、『ポケットモンスター サン・ムーン』の主人公。 
プレイヤーの分身としてイッシュ地方を旅する主人公。

プレイヤー自身が主人公を演じて冒険する、RPG(ロールプレイングゲーム)というジャンルの基本である。ゲームの主人公はだった!

『ポケットモンスター』シリーズのゲーム中では「はい・いいえ」などの選択肢を除いて 主人公が喋る描写を極力見せない。どのような人物としても解釈可能なように特定の人格を与えられていないのが特徴だ。
※ここでいう『ポケットモンスター』シリーズとは、ポケモン公式サイトのゲームソフト一覧でチェックを入れると確認できる、いわゆるゲーム本編のことである。

ではレッドの名前は一体どこから現れたのだろう。

最初に「レッド」が登場したのは"説明書"


『赤緑』を購入したプレイヤーがゲームのパッケージを開封して最初に目にするのは「取扱説明書」という紙の冊子だった。現代のゲームには付属しないことが多いだろう。


『赤』の説明書(画像左)では主人公をレッドと呼び、ライバルはグリーンと呼ばれている。
『緑』(画像右)では主人公とライバルの名前が入れ替わり、それぞれグリーンレッドとなる。
実際にはゲーム開始時にレッドやグリーンでない名前を決めることができる。

この時点ではレッドグリーンどちらも主人公の名前であったはずだ。

しかし初めて主人公を「レッド」の名に固定したのはコミカライズ作品「ギエピー」で有名な穴久保幸作先生の『ふしぎポケモンピッピ』(別冊コロコロコミック1996年4月号~)、後の『ポケットモンスター』(月刊コロコロコミック)だ。第1話がここから読める。
この"レッド"の本名は「赤井勇」

最初に「サトシ」が登場したのは"選択肢"


ゲームを開始すると最初にオーキドから主人公の名前を尋ねられる。「じぶんできめる」の他に3つの選択肢が並べられており、説明書のレッドの他サトシがいる。


レッド サトシ ジャック / グリーン シゲル ジョン

この時点で他にサトシの名前があり、ライバル名の候補にはシゲルの名前がある。

TVアニメのサトシシゲルの名は、こちらを採用したわけだ。

有名な話だが、サトシはポケモンの生みの親・田尻智氏の下の名前「智(さとし)」であり、氏が先人ゲームクリエイターとしてライバル視していたスーパーマリオの生みの親・宮本茂氏からとられたのがシゲルである。

サトシシゲルから主人公を選ぶとしたら、ポケモンの生みの親であるサトシの方を固定の主人公名に選ぶのは至極当然と言える。であれば、どちらか一方に決めなければならない場合、『赤』基準でサトシレッド側を主人公、シゲルグリーン側をライバルとみなすのは自然な流れかもしれない。

この時点では、まだアニメが放映される前、シロガネやまのレッドも存在しない。


ライバルという存在


田尻氏「(前略)そしたら宮本さんが、田尻くんはいい選択したねって言ってくれたんです。ぼくはものすごくそれが嬉しかったんです。生意気に言うとライバルかもしれませんが、でもやっぱり兄貴ですね。」(書籍『ポケモンストーリー』 2000/12より)

2016年マリオとポケモンのコラボ イメージイラスト
今でこそマリオシリーズに負けずとも劣らないまでに大きくなったポケモンシリーズだが、発売前からそれぞれのクリエイターどうしお互いをライバルと認める形でゲームの名前候補に仕込んでいたのはすごいことだ。

『スカーレット・バイオレット』でライバルを必要としているネモ
ライバルの存在が自らを高めるために必要だというメッセージは、ポケモン本編シリーズ最新作でも変わらず描かれており、ポケモン原案の田尻智氏自身が実践して見せたことが何よりアツい。

通信対戦、公式大会の観点では『赤』のプレイヤーと『緑』のプレイヤーはお互いライバルであるとも、どちらも主人公であるとも言える。(もちろん『赤』と『赤』でも構わない)

『赤緑』にライバルとなる登場人物がいること、そしてバージョンでその名前候補が互い違いなのは、プレイヤーどうしもライバルとして等しく競い合う関係だと意図されていると考えてよいだろう。


『青』での名前候補は?


ちなみに遅れて発売された『青』(1996/10/15)では主人公・ライバルの名前候補は
主人公名 :ブルー ツネカズ ジャン 
ライバル名:レッドグリーン・ヒロシ

主人公名第1候補はバージョン名の色という命名規則に従ってブルーとなったが、
ライバルの色に関して『赤』と『緑』の対から外れた『青』ではレッドグリーン両方を盛り込む事になったようだ。
ここで"レッド"は、主人公よりもライバル名で二度候補にあがった名前になった。

『青』発売前に刊行された攻略本『任天堂公式ガイドブック』の表紙に主人公・ライバルの他に女性キャラクターが描かれていた。だが初代ゲームにはこの人物は登場しない。
公式アートを担当された杉森建氏による攻略本表紙のためのイラストで、当時は名称不明だったが後にリメイク版『ファイアレッド・リーフグリーン』(以下『FRLG』)の女の子主人公としてアレンジされたり、Switch版『Let’sGO!ピカチュウ・Let’sGO!イーブイ』(以下『ピカブイ)』ではNPCキャラクター・ブルーとしてアレンジされる。
 "ブルー"の名は漫画『ポケットモンスターSPECIAL』でゲームよりも先にこの女性キャラクターに関連付けられた。

第2候補ツネカズについて。
サトシ・シゲル・ツネカズ それぞれ権利表記に名を連ねる三社の重役…
田尻智(GAMEFREAK) 宮本茂(Nintendo) 石原恒和(当時Creatures)…から名前がとられたことになる。
ライバル側の第3候補ヒロシは 山内溥 元社長(Nintendo)からとられたかもしれない。(TVアニメではシゲルとは別のライバルの一人として登場した)


TVアニメの主人公「サトシ」登場


アニメ 第1話 キミにきめた!

1997/4/1 地上波でTVアニメが放映開始。
ここでようやく、今現在知られる一人格としてのサトシが登場する。『赤』での名前候補のひとつにして、ゲーム原案・田尻智氏にちなんだ、十分な理由をもったネーミングだ。

旅立つ前に3種(通称御三家)の内から1匹ポケモンを貰うことのできるゲーム原作と異なり、主人公が最初にもらうポケモンがピカチュウへ変更されている。その理由についてはよく知られているので触れるまでもないだろう。

彼の目標である「ポケモンマスター」という概念は前述の『任天堂公式ガイドブック』が初出のようで、ゲーム内には存在しない単語だ。
同時期発売の攻略本『ポケットモンスター図鑑』にはポケモンマスターの単語は登場しないが(この本とアニメとの関係はこちらの記事で解説している)、両書がアニメ化の際に参考にされたと思われる。

同時期に連載スタートしたコミカライズも影響が色濃い。


中央:『電撃! ピカチュウ』(別冊コロコロコミック 1997年4月号〜)
主人公名サトシでアニメのシナリオに沿ったコミカライズ。デティールが異なる。

左:『ポケットモンスター SPECIAL』(小学4年生他 1997年4月号〜)
こちらは主人公名レッドでアニメとは最も内容が遠いだろう。ゲーム設定に準拠しているがオリジナリティが濃い。ニックネーム「ピカ」というピカチュウが手持ちにいる。

右:『まんが版 ポケットモンスター全書』(1998/4)
主人公名がサトシかつ"ポケモンマスター"に憧れるというところまで共通だが、内容はゲームに準拠かつ補完するものになっている。



ポケモンの海外展開


北米版アニメ第1話 I choose You!

1998/9/8 北米でアニメがスタート。サトシの英語圏での名前は"Ash"だ。
遅れて9/28 北米ゲームが発売される。グラフィックは『青』版のものが使われている。


候補名は Red Ash Jack サトシがAshに置き換わったものになっている。

日本国外ではレッド/ブルーの2本同時発売なため、ライバルが"ブルー"になっている。
初代のタイトルで世界共通なのが『赤』バージョンであることは、この先 初代の主人公名が『レッド』に絞られる理由付けとして強いかもしれない。

アニメ→ゲームの流れ


1998/9/12『ピカチュウバージョン』(以下『ピカ版』)発売。
TVアニメ化後に発売された初のタイトルで、ゲームのグラフィックやシナリオがアニメに寄せられた内容になっている。主人公のピカチュウのみ鳴き声がアニメの声(CV大谷育江さんの声を再現した波形ノイズ)になっているという力の入れようだ。

以前の記事で紹介したがピカ版を境にゲーム内グラフィックもアニメ寄せになっている。
元々ドット絵で直にデザインされたキャラクターの細部が、グッズ商品化やアニメ化を経て詳細に定まり、ゲームグラフィックへ反映された。

特にオーキド博士から最初にもらえるポケモンがピカチュウに決まっており、モンスターボールに入らず後ろからピカチュウが付いてくる。後の世代に"連れ歩き"として引き継がれる要素はこれが原点でもある。


主人公名 :イエロー サトシ ジャック 
ライバル名:ブルー・シゲル・ジョン
色名の名前候補は従来通りイエロー、開発者名にちなんだ名前候補はアニメに合わせサトシ/シゲルが再び採用されている。
主人公とライバルのグラフィックも『赤緑青』から変更されている(取り扱い説明書に絵描かれた公式アートに合わせた)。

バトエン サトシレッドがまだ完全に分離する前の商品
この頃、まだゲームの主人公=プレイヤーの分身に、はっきりとした人格は存在しなかった。ゲーム公式アートの少年はレッドでありサトシであり、グリーンでもブルーでもイエローでもあった。2023年現在ほどサトシとゲーム主人公が区分されていなかったのだ。


NPCレッド登場とサトシの残り香



1999/11/21『金銀』ではクリア後のラスボスとしてレッドがNPCとして登場。このレッドこそが、現在多くのファンが認識している初代ゲーム主人公の姿ともいえる。前作からのプレイヤーにとって"俺"ではない主人公との遭遇に驚きがあっただろう。

ピカチュウがLv.81と非常に高レベルで、リメイク版『ハートゴールド・ソウルシルバー』(以下『HGSS』)ではピカチュウがLv.88へアップ、シナリオ中に戦える敵としてはシリーズ通しても最高の設定だ。(『ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』の強化シロナのガブリアスがLv.88で並ぶ)

さらに前作御三家を全種連れている。こちらは『ピカ版』でシナリオ中、イベントで入手できるポケモンをパーティとしている。『ピカ版』の主人公を引き継いだ世界線とも言えるが、そもそもはアニメのサトシの活躍に倣ったものである。前作主人公がレッドではなく、サトシとして登場したとしても違和感ないかもしれない。


シナリオの途中で今作のチャンピオン・ワタルが「ポケモンマスター」という単語を用いだす。『金銀』主人公が旅立ちの際に目指したりした描写はなく、作中では突然この単語が登場することになる。プレイヤーがアニメを視聴している前提か、あるいはラスボスにサトシを想定した伏線の名残だろうか。

アニメは本来、"ポケモン2"こと『金銀』が発売されるまでに最終回を迎えるつもりで迎えることが可能なように(3/19修正)シリーズ構成が組まれていたが、『金銀』の発売延期のためオレンジ諸島編でつないだりしつつ、そのまま終わらないシリーズになってしまった。アニメ初期のシリーズ構成担当首藤さんのコラムで詳しく触れられている。

『公式ファンブック』(1997/5)で金銀開発初期 前作主人公をサトシと呼ぶ田尻智氏
(3/19画像追記:Twitterでのリプライで思い出しました。ありがとうございます。)

邪推に過ぎないが、アニメが終わらずサトシの冒険が続くことになり、ゲーム内に「ポケモンマスター」として登場させるには無理が生じたため、別人としてレッドの名前で配置することにしたのではないだろうか。本当にそうかどうか知るよしもないが。

多くの人が、ゲームとアニメは異なるもの、レッドとサトシは異なる人物、と意識するようになったのが、ここからではないだろうか。

レッドのビジュアル更新


2004/1/29 『FRLG』で『赤緑』がリメイクされる。
男の子主人公の見た目が更新されただけでなく、前述の通り女の子の主人公も選択肢として追加された。
こちらの主人公アートがレッド現在のスタンダードなイメージとなっているかもしれない。
『スマッシュブラザーズ』シリーズではあくまで「ポケモントレーナー」としての参戦だ。

NPCレッドとしては『金銀』のリメイク『HGSS』でもこちらのデザインが引き継がれ『ブラック2・ホワイト2』にも登場する。アプリゲーム・ポケマスに登場するレッドもリメイク版のデザインを基本としている。
また、『赤緑』=『FRLG』の物語に沿ったアニメ作品『ポケットモンスター ジ・オリジン』(2013)の主人公もここから派生したレッドだ。

以降レッドは作品毎に異なるデザインで描かれている。
2016/11/18『サン・ムーン』では成長し大人になったレッドとして登場。
2018/4 ポケモンセンター(店舗)20周年記念イラストは『赤緑』準拠。ポケカにレッドの名が登場するのもこの時が初?
2018/11/16『ピカブイ』では主人公ではなくNPCとして頭身の低いデザインで登場。

金銀レッド含め、おそらくどれもパラレルワールドのレッドであり、一貫した歴史をたどってきた同一人物ではない。

総合的にぼんやりしている「ゲーム原作のレッド像」をなんとかまとめているのがポケマスのレッドだろう。


サトシのビジュアル更新


対してサトシは、シリーズごとに描かれ方に差異が出るものの、1997からずっと同じ人格を通している。衣装と合わせて顔つきなどキャラクターデザインも時代に合わせて変化している。

劇場版20作目『キミにきめた!』(2017)は初期のエピソードをリブートした作品であり、それ以降の劇場版作品は完全にパラレルワールド(並行世界)のサトシとする観方が強いだろう。帽子のデザインの違いから「サトシ(キミきめキャップ)」と呼称しよう。

キミきめキャップのサトシの劇場作品群は、TVやゲームでの展開に合わせるノルマから切り離され、クオリティ高く意欲的な作品が続いていたが、コロナ禍に見舞われて『ココ』(2020)以降ポケモン映画が作られなくなってしまった。非常に残念だ。

(2023/3/28追記)2019年には3DCGアニメーションで劇場版第1作をリメイクした『ミュウツーの逆襲Evolution』が公開された。ポケモンが使用するワザや劇伴が変更せらた程度で、内容に変化はない。波止場のカモメがキャモメと言い換えられたのが面白い。(追記ここまで)

上の図ではオマケとしてTVシリーズ作中で描かれた鏡世界、別世界のサトシの分岐点も加えておいた。同じように本筋のサトシも、キミきめキャップサトシも、ゲーム本編のレッドたちの世界も並行世界として存在するのかもしれない。


サトシとレッドはライバル


「ポケモン」においてゲームとアニメのメディアミックスは恐ろしいほど噛み合っていたと思える。
時に原作ゲームと違う!と異を唱えながらも、ゲームでは描けない不思議な生き物たちの活き活きとした動きや人と触れ合う姿を見ることで、ポケモン世界の解像度を高め、豊かなものにしていけた。

第1話にしてボールに入らないピカチュウを描くという、ポケモン捕獲の要のアイテム「モンスターボール」のコンセプトを否定する所から始まるのは凄い。
これがなければ『ピカ版』のなつき度や連れ歩きも生まれず、ポケモン本編ゲームが今の形になっていたか、そもそも続いていたかもわからない。

ゲームの新要素メガシンカに対してアニメオリジナルのサトシゲッコウガを登場させた時もそうかもしれない。ゲーム側に欠けているものを補完し盛り上げてくれた。

ゲーム開発スタッフ、アニメ制作スタッフ双方のベストを尽くしながら表現で戦い続けてお互いを高め合っていた様子はまさにライバルと呼んで差し支えないだろう。レッドサトシ、決して交わらないメタ世界でのライバルだ。

沢山の凸凹も生まれたけれど、今ではどれも良い想い出。

ポケモンが1000種を超えて、サトシの冒険を追うカメラが止まり、この先どんな世界が待っているのか、非常に楽しみだ。

ありがとうサトシ。


かつて一つの主人公だったプレイヤー・[じぶんできめる]レッドサトシがポケマスで集結したのは 胸アツ!というお話。



2021年4月23日金曜日

ポケカ杉森建イラスト収集

ポケモンのデザインが話題にあがる際、引用されるのは基本"公式イラスト"だ。ポケモンキャラクターは様々なメディア、クリエイターによって多様に描かれるが、その原作・デザインの基準にあたる。

"公式イラスト"が描かれた時期は、新旧10年以上開きがあり、絵柄の変化、絵の更新、描き手が交代したものも含まれる。デザインそのものの単純比較が難しいことはこれまでの記事で纏めてきた通りだ。

ポケモンらしさ-2_意見分析 マスコット感検証

ポケモンらしさ-9_BWとデザイナー

その"公式イラスト"をこれまで多く手掛けてきた杉森建氏は、書籍「ポケモンカードゲーム イラストコレクション」(2014)で"公式イラスト"について語っている。

-ポケモンの公式イラストとポケモンカードゲームのイラストの特徴や作画時のポイントを教えてください

 公式イラストは、ポケモンを紹介する役割があります。このポケモンはこういうすがたをしていて、こういう行動をするとか、そのポケモンの個性を1枚のイラストで全部見せないといけません。そのため、平均的な構図やポーズになってしまいがちです。 

 かたやポケモンカードゲームは、場面を切り取ったような絵なので、攻めたイラストを描けます。カメラがすごく寄ってもいいし、アングルも自由です。迫力さえ出れば、ポケモンの体をすべて描かなくてもOKになります。特別なワザを出しているところなど、ポケモンのさまざまな面を描けます。そこが面白さですよね。/ポケモンカードゲーム イラストコレクション(2014)

ポケモンカードイラストはいわゆる"派生"だが、今回は"本家"でもある杉森氏によるカード描き下ろしイラストに注目してみよう。

カードゲーム自体はこどもと軽く遊ぶ程度の熱心なプレイヤーではなく、イラスト愛好家な視点になる。さほど詳しいわけではないので間違った言及があれば指摘頂ければ幸い。


2021年1月11日月曜日

裏設定の宝庫『ポケットモンスター図鑑』

ポケモンで有名な都市伝説。

あるあさのこと。
ちょうのうりょく しょうねんが
ベッドから めざめると
ユンゲラーに へんしん していた。
ゲーム「赤・緑」のポケモン図鑑で読める、ユンゲラーというキャラクターの説明文だ。ポケモンの正体が、実は人間だったというセンセーショナルな内容から、話題にあがりやすい。

実はこの文章には続きが存在しているのだ。

「ある朝のこと。超能力少年がベッドから目覚めるとユンゲラーに変身していた」ユンゲラーを題材にした小説『変身』が、<第2回>ポケモン文学賞を受賞したのは記憶に新しい。ピカチュウが"アイドルのポケモン"だとすれば、ユンゲラーは"玄人好みのポケモン"といえる。/『ポケットモンスター図鑑』(1996)

なんと、少年がユンゲラーに変身した話は、小説の架空の出来事だったのだ……
出典もなしに引用、誤解を与える形で切り取るとは、"図鑑"にあるまじき記述!


伝説の攻略本『ポケットモンスター図鑑』


画像左が表紙、右が裏表紙

この詳細な文章が掲載されている攻略本『ポケットモンスター図鑑』は1996年4月5日発行。ゲームが発売されたのは同年2月27日。うるう年だったので1ヶ月とちょうど1週間後に出た、攻略本としては最古の部類になるだろう。当ブログでも度々紹介しているポケモン考察には欠かせないバイブルだ。


初代ポケモンがブームになってからは沢山の攻略本が出版されているが、ポケモンの世界観や生態描写そのものが濃厚に掲載されている書籍はこの他に無いだろう。全143頁中、半分の76頁は読み物と開発スタッフのインタビューだ。ゲームの登場人物であるオーキド博士やマサキによる講義も掲載されている。


ポケモン原作ゲームの開発元、ゲームフリークがしっかり関わっている本でもある。制作者自身による世界観の補完的な資料集といって良いだろう。


執筆の一人とみさわ昭仁氏は、「ルビー・サファイア」〜「ハートゴールド・ソウルシルバー」までシナリオを担当したスタッフで、最新作「ソード・シールド」でも久々にシナリオに協力されている。

ポケモンの(最初の)公式イラストを最初に描き起こしたのも、この本のためだと、ゲームフリークの杉森 建氏もインタビューで述べていた。(聞き手は とみさわ氏)

ー最初に公式イラストが必要になったのって、 何のためだったんでしょう? 

杉森 『ポケモン赤・緑』の最初の攻略本で、アスペクトから出た『ポケットモンスター図鑑』に全ポケモンのイラストを掲載したいと 言われて描いたのが最初ですね。でも、その段階ではポケモンの原画ってドット絵しか存在しなかったので、そのドット絵から全部自分の絵として描き起こしていったんです。ちょっと気にくわないところは修正したりして(笑)それで全部自分のキャラクターらしくしたのが、以後、僕がすべてのポケモンのテイストを統一させるようになったきっかけですね。/『杉森建の仕事』(2014)

『ポケットモンスター図鑑』のために かなりの手数がかけられていることがわかる。


ちなみに 初代ユンゲラーの図鑑説明文が小説の引用であることが、その後の原作ゲームや他の媒体で触れられたことはなく、さらに後のシリーズではこう書かれている。
ちょうのうりょくの けんきゅうを てつだっていたエスパーしょうねんが あるとき とつぜんユンゲラーに なったと うわさ されているのだ。/エメラルド(2004)
エスパーしょうねんが じぶんの なかの サイコパワーを おさえきれなくなり へんしんして しまったとの せつも。/サン(2016)
出典不明の情報が噂となりいつのまにか"説"として扱われる…ポケモン図鑑による風説の流布が、現在進行形で進行していることがわかる。

(2023.08追記)ポケモンLegendsアルセウスで古い時代にも ユンゲラーへの変身譚が存在したことが明かされた。
神通力有す童が変容した姿と噂あるも真偽不明。手に持つ匙は脳波を高める効能ありと推察す。/Legendsアルセウス(2022)
初代の図鑑文章が引用であることには変わりがないが、その小説『変身』自体が民話として既に存在する変身譚から着想を得た内容なのかもしれない。(追記おわり)

長く続いたシリーズの中で言及されなくなったり、「中国」のような実在の地名が「東洋」に書き換えられたりといった変更は存在する。

『ポケットモンスター図鑑』にしか記載されていない数々の「裏設定」を紹介しつつ、現在のポケモンシリーズ全世代の図鑑文章と比較して、今でも通用するのか検証していこう。


赤緑より詳しく書かれている情報
ニドラン♀は進化するとタマゴが産めない
野生の産卵とタマゴシステム
ミニリュウとポケモンブーム
オーキド博士のフルネーム
ゲーム完成時点の世界観
アニメ初期≒小説版と現実の動物
東京タワー?現在避けられる言葉

2020年9月18日金曜日

ポケモンらしさ-9_BWとデザイナー

2010年9月18日は「ポケットモンスターブラック・ホワイト(以下BW)」の発売日。
ちょうど10年たった今、登場ポケモンのデザインについて触れたい。


今年2月に非公式に「ポケモンらしさ」アンケートを行い、回答者の年代やプレイ経験差から生まれるポケモンのデザイン』に対する主観の違いを分析してきた。
BWはデザインの転換期であるとの声も多く寄せられた。


究極のポケットモンスターを目指した「ダイヤモンド・パール(以下DP)」までは新規や既存のキャラクターの進化系列など、バリエーションを継ぎ足しながら世界観を豊かに、プレイヤーを飽きさせないように工夫が為されてきた。(DPのデザインについては別の形で触れる)


新種が追加される区切りで言うと"第5世代"にあたるBWでは、それまでの既存キャラクターを一時封印し、ゲームクリアまでは完全新種のみが登場する。

その数151種
初代赤・緑のキャラクターと同じ数だ。
クリア後に出会える追加要素や、劇場版アニメとの連動で得られる総数は156種となる。


既存のキャラクターに頼らず、しかしポケモンと出会い捕まえて育てる楽しさは変わらないように、デザインの「多様性」「バリエーション」は維持したい。恐らくそう考えての、初代キャラクター総数の踏襲だろう。

その内訳についても、強引ながら赤緑のバリエーションと比較した。
手探りの中151の多様性を開拓した初代と、その完成済みの151の多様性を14年の時を経てリブートしたBWの違いが一覧できる。

赤・緑151とブラック・ホワイト156のデザインのバリエーション比較図

5世代に渡って踏襲され続けてきた「御三家」「準伝説」「序盤〜」という枠は共通だ。

動物っぽいデザインや、無機物をモチーフにした種類、人型まで多少の増減はありつつ、ばらつき具合はかなり初代を踏襲した形跡が見られると言えるのではないだろうか。

この図ではうまく初代→BWのオマージュ対比がはまりきってはいない。初代自体が凸凹で今考えると歪なタイプバランスをしていたり、第2世代以降に定着した"枠"もある。そうしたズレも「変化」したポイントだろう。

BWは、初代からの継ぎ足しではない、総入れ替えだったことで「変化」が顕著に可視化されたタイミングだったのだろう。


2020年7月10日金曜日

ポケモンらしさ7_"デジモン"に関する意見


2020年の2月に行ったポケモンらしさアンケート 。23,000件の回答のうち、自由記述の意見投稿を6,841件頂いている。
今回は頻出単語としての「デジモン」に焦点をあてる。

ProfessorOK氏の、デジモン/ポケモンの画像の深層学習による分析レポート「最近のポケモンはデジモンっぽいのか、ディープラーニングに聞いてみた」の、参照元として デジモンに関連する投稿意見全てをまとめる。 


「デジモン」の単語が含まれる意見は155件。意見投稿の1.8%、全回答の0.5%だ。 
内容を精査すると、125件がポケモンのデザインに「デジモンっぽさ」を感じたことがあるという意見だった。

2020年6月2日火曜日

ポケモンらしさ-6_実写化とリアリティ

名探偵ピカチュウ』が先日、2020/05/22の金曜ロードショーでTV放送され、この作品に関するアンケートを行った。実写表現に関する設問は、2月の「らしさアンケート」で、聞きそびれて後悔していた項目だった。
 

アニメやマンガの実写化が反感を買いやすい風潮がある中、比較的評判が良く、珍しいケースといえる。

これまでデフォルメイラスト・アニメ調なデザインで慣れ親しんだポケモンに、公式作品としてリアルな質感を与える試みが、一定の成功を収めた今、改めて元々の「ポケモンデザイン」を見直すいい機会ではないだろうか。


*2020 6/2 21:50 リアリティに関する得票数の記載漏れとグラフを修正。
その他誤字脱字修正。

はじめに

このブログについて ポケットモンスターシリーズの世界観について、1人のファンが非公式に考えたことをまとめていくブログです。自身の意見の全容がわかるように置いておくのが開設理由です。 主に オリジナル である ゲーム (株式会社ゲームフリーク開発の本編) を中心 に、派生ゲ...