2018年3月5日月曜日

ORASのシナリオ考察3 キンセツ関連 (旧記事)


 RSからORASへリメイクされた際、マップ上で大きく変更のあったキンセツシティとその周辺の設定について変更意図を汲んでいく。

 数十年前のホウエン地方、地下都市計画ニューキンセツの開発中止により本社ダイキンセツホールディングスは経営にダメージを負い、関連事業シーキンセツは閉鎖を余儀なくされてしまった。

破棄され廃墟と化したシーキンセツには、自然=ポケモンのための理想を掲げた、後のキンセツジムリーダ・テッセンと、社員たちの生活という現実を守るシーキンセツ側の過去の戦いの記録が生々しく残されている。

※移転テストとして過去ブロマガに掲載したシナリオ考察記事の転載です。公開2016-03-21



ORASのシナリオ考察
1.図鑑と通信
2.マグマ団アクア団
3.キンセツ関連(ココ)
4.ゲンシカイキ
5.エピソードデルタ
 本考察では、劇中の主人公視点のシナリオの世界観となるNPCの台詞やテキストと、
プレイヤー視点で語るゲームデザインとしての仕様及びNPCのメタ発言パロディ表現や旧作プレイヤー向けファンサービスとしてのメタ発言制作上の都合や元ネタ・モチーフに言及したり、タイアップ・広告宣伝に関わる情報などを混同しないように試験的に色分けを試みています。

キンセツ関連 設定変更の意図


 これらは劇中での時代は遡るが ORAS本編におけるA団とM団の対立と同様の 自然vs人類の営みの対立事例としてリメイク作のテーマの補強のため追加された設定だ。

人のせいで自然が破壊されるという結果は想像しやすいが、自然のために犠牲になる人間という現実は想像しづらい。

ORASにおけるAM団の対立関係がより吊り合うよう、またORASのテーマである「共存」がいかに難しいことなのか、単純に人間側が諦めれば済む話ではないという面を描こうとしたサイドストーリーであると察する。

マグマ団リーダーマツブサは「人間とポケモンの共存などという バカげた理想によって進化の遅れた愚かな世界……世界に終わりの始まりをもたらす」と宣言しており、これはニューキンセツ閉鎖などのテッセンの理想を指しているのではないだろうか。



散見されるブラックユーモアについて(’18/03 加筆修正)

 「黒さ」というものは、面白さに関心のある多くのクリエイターたちが持ち合わせている感性だと思われる。勝手に「任天堂は子供向けで清いのにこんなネタも入れるんだ!」と騒いでいるのが大半ではなかろうか。

ゲームフリークの作り手としての本質が黒い(皮肉に満ちている)部分を持ち合わせているだけで、巷で言われるような「黒い任天堂」をやろうとしてねじ込んだ設定ではなかろう。その姿勢に初代から一貫性があるとも言える。

 ただ、ルビーサファイアのオリジナル部分とくらべて情報過多な改変が非常に浮いて見えるのが気になる所でもある。(設定を)語りすぎな部分も好みが別れただろう。
棚1マスごとにまで異なるテキストを用意する勢いは、サンムーンのマップ上のオブジェクトにも欲しかった仕事量だ。

 近年のゲーム画面の解像度やグラフィック描画の向上、モーションの細かさなど、作品の情報量が増えるに伴い、テキストに求められる情報密度もまたあがってきた面もあるだろうと思う。リメイク前の時代の情報量を引きずるORAS全体としては少々歪かもしれない。

 個人的にはシーキンセツの廃墟描写はわくわくしたし、キンセツシティの「地方都市ジャスコ感」共々妙な生々しさが好きだ。各街で売れ残っているホウエンジャーグッズのご当地ヒーロー感も作った人間が「話題にもならなかった」などというと胸が苦しい。
 華やかなカロス地方の次作で、地方都市感をここまでやれるのか…。

キンセツ関連 リメイクに伴う主な変更点


キンセツシティ

 新しさと懐かしさとが交差するホウエンの中心に位置する大都市

 RSでは周囲の街との"近接"の意が込められた街だった。画像のNPCが言うような特に栄えているわけではないマップで、育て屋で受け取ったタマゴを孵化するための通り道としての印象が大きい。ORASでは街全体を覆う巨大な建造物となり、1階のショッピングモール、上階の居住区、屋上などがある。
タマゴ孵化に関してはより便利な育成環境としてバトルリゾートへとバトンタッチされた。この考察では触れないが大人の事情でゲームコーナーは閉店扱いとなっているそれに伴いアレンジされなかったBGMも生じてしまっている。
(ファンによるキンセツゲームコーナー3DSアレンジをどうぞ)
※追記 ポケモンLIFEの記事によると、テッセンの台詞に違いがあり、旧RSでは「キンセツの改造を諦めた」とジムで言っていたのが「改造を諦めなかった」ことになっているとか。


キンセツヒルズ

 ORASで新規追加されたキンセツシティの上階部分、セキュリティ完備の居住区だが怪しい住人が多い。シーキンセツに関わったとみられる住人もいるため、過去に職を奪ってしまった相手へのテッセンなりの配慮があったのだろうか?


ニューキンセツ
 地下69階の巨大ジオフロントとして開発は進んでいたが 事情により中止となった

RSにあった同名のマップの存在を掘り下げたシナリオである。開発にテッセンが関わっていたのは変わらないが、より大きな企業のプロジェクトの一つということになっている。
テッセンはキンセツシティ中央に設置された"角柱の塔(XYミアレタワーを模したモノ)"で監視を続けている


シーキンセツ
 数十年前に閉鎖された施設 今は自然保護区として保存されている


 すてられぶね=座礁船カクタス号からエネルギー資源の採掘施設へと変更された。
 攻略自体はRSのすてられぶねと似た仕掛けとなっており、"たんちき"を探す目的も変わらない。詳しくは次の項に。条件を満たすと上部にホウオウ、下部にルギアが現れるあたり、RSと同じ第三世代のFRLGに存在した"へそのいわ"が思い出される。



ダイキンセツホールディングス
ORASにて新規追加された、キンセツ関連のプロジェクトを束ねていた大企業。キンセツシティに本社があったかは定かではないが恐らくニューキンセツの開発中止の影響により、シーキンセツ共々消滅したのではないだろうか。どのみち、海底のエネルギー(自然エネルギー?)採掘事業の競合相手であるデボンコーポレーションの開発していた「ムゲンダイエナジー」によって傾いていた可能性が高い。デボンへ内偵を送って動向を探り、危機感をもっていたようだ。



すてられぶね から シーキンセツ への変更について

Nagasaki Hashima 01.png軍艦島こと端島 "Nagasaki Hashima 01" by Hisagi (氷鷺) - Licensed under CC 表示-継承 3.0 via ウィキメディア・コモンズ.

「シーキンセツ」への変更については、捨てられ船のそもそもの元ネタである九州長崎県の軍艦島ブームによるところが大きいと思われる。シーキンセツの方が船より元ネタに近い姿をしているともいえる。
軍艦島もRS発売当時は立ち入り禁止にも関わらず上陸する者が絶えない廃墟マニアの聖地であったが、現在では一部一般開放され観光名所と化している。

 シーキンセツも軍艦島同様かつて”人の発展のため”の場所であったが、現在は ”自然の一部”となった廃墟であり、特別保護区に指定されている。
 遺された資料などの文書は、これまでのシリーズにおける遺跡の碑文、伝承や神話などの現代版と言っても過言ではない。ミュウツー出生の秘密が眠るポケモンやしき以上に鮮度の高い遺跡である。ここでのメインのクエストは「宝探し」と言える。

 RSすてられぶねからの総入れ替えであるため、カクタス号の設定消失を惜しむ人もいるかもしれない。

 個人的に残念に思うのは、RSではハギ老人の船で105~109番道路のマップを通る際、すてられぶねの存在がチラ見せされ「なんだあれ!波乗りを手に入れたらあそこに行きたい!」と思わせられる素敵な仕掛けがあったのだが、ORASでは船出がムービー扱いとなりムロタウン~カイナシティは強制スキップされてしまう。

 全てが3D化したデメリットのひとつだろうか…シナリオに関係なくて恐縮だが ポケモンシリーズのマップにシームレスでない部分があるのは、あの世界への没入感を損なっていて本当に惜しい。

※きんのたまネタやベッドの下の本の描写の是非は議論の種だが、本考察ではいつものファンサービスの類としてスルー。


シーキンセツで見られる「ムゲンダイエナジー」関連の記述はメガシンカの項でとりあげる。


後ろめたい過去が描きたかっただけではない


 誰かへの恨みつらみや良好とは言えない人間関係が遺されたシーキンセツだが、このサブイベントには、伝承の古代の王などと違い、現生する登場人物の名前が多数出てきている。意識したいのは、今現在のホウエンで彼らが皆不幸な暮らしをしているかどうかである。一部の元シーキンセツ社員たちも造船所で元気に働いているし、ソライシ(タカオ)博士も夢が叶ったようである。


 主人公が行動することによって「何の力もない男」にもソライシ・ライゾウにもなにかしら救いがあったのではないだろうか。
 今もなおニューキンセツの監視を続けているというテッセンも過去の責任を放棄したわけではないだろう。

 過去のキンセツの内乱や、A団M団のように、お互いの主張、思い描く理想が食い違う時、抗争バトルに限らず戦いは生じてしまう。重要なのはぶつかり合って勝敗が決まった後の「共存」の部分にあるのだろう。そこまで含めてORASでは描き切っていると言える。


過去のシリーズからの影響


 シーキンセツは軍艦島をモデルに、作りこまれた退廃的なマップ、時の経過に侘びしさを感じさせる遺物、大いに廃墟探索の魅力を詰めこんだサブイベントと言えるが、シナリオの登場人物たちの説明を全部ここで語ろうという意図が見え透けてしまわなくもない。
 良くも悪くもRS以降増田ディレクターが挑んできたBWにおける理想と真実の対立、XYにおける与える者奪う者 そういった思想的なテーマが煮詰められ色濃く反映された結果であろう。
 キンセツヒルズの住人と樹上に住むヒワマキシティの住人の対比も、BWにおけるブラックシティ、ホワイトフォレストの対比のように意図して設定されたのかもしれない。
 RS→ORASの変化の間に、BWやXYを作ってきた制作者側の思想の変化を感じ取ることができる…かもしれない。


シーキンセツの文献と人物関係のその後 まとめ


造船所 ハンノキ

「シーキンセツ 社…報 389号
今…の 勤労……ーガン は …1貯蔵班 ハンノ…の 作品
自然 汚すな! 作業着 汚せ! 」

ハンノキ「シーキンセツ時代の部下とばったり再会したんだ。
随分と出世したみたいなのに 当時の仕事のミスを 今になっても何度も謝るのが面白くてな。
『あのとき かなめいしをなくして すいませんでしたっ!!』なんてね。
ぼくはなんのことか覚えていないのだが なんだか懐かしくて 嬉しくなったもんさ」



ジムリーダー テッセン



『テ(ッセ) ン 動向調査 報告』(欠けた箇所の違うORとASの文字を組合わせたもの)
「ニューキンセツプロジェクト 中止に 向けた 一連の行動は 事実と 判明

我がグループへの反逆者として 早急な処理を 進言する  以上    第…工作班 ヲ組 班長 ツガ 」
『ルチアに似たおねえさんが表紙のよれよれになった雑誌』

「ついに ニューキンセツ プロジェクトの 中止が 正式に 決定!!これに伴い シーキンセツの閉鎖は いよいよ 決定的に!!
同社に勤務する社員からは すでに不安の声があがっている!!この問題に関して ダイキンセツホールディングス役員は 未だ黙秘を貫いている模様!これに対して同グループの ニューキンセツ プロジェクト責任者 テッセン氏は こうコメントしている…



造船所 クスノキ ツガ



「いよいよ閉鎖の日が決まった

路頭に迷う オレたちを誘ってくれた クスノキには いくら感謝しても足りない
オレも 今まで汚れ仕事をしてきた ツガちゃんも 生まれ変わることができる
彼の事業を支えていく… それが オレ達ができる 唯一の恩返しだ 」


力なき男→キズナオヤジ(XY)

「ニューキンセツ プロジェクトの中止が 与えたダメージは致命的だ
おれは経営陣の一人として 多くの責任と負債を負う
自然・ポケモン・環境保護 立派な理想だ 実に結構 テッセンは立派 素晴らしいんだろうさ
だが おれが守る組織と現実は あいつの 理想が ぶっ壊していった
だけど おれにはなにもできない おれは なんの 力もない男だ 」


(キンセツヒルズ 力なき男の部屋)
「おれは なんの 力もない 男……」


XYに登場するキズナおやじのシュールな誕生秘話




ソライシライゾウ・ソライシ博士(タカオ)


(キンセツシティ屋上 老人)
「昔 シーキンセツに勤めていたが 今も忘れられぬことがある
もはや 名さえ浮かばぬ ある部下 不注意な男で 大きなミスを起こし オレは解雇を命じた
男が 去り しばらく過ぎたころ 彼あてに 荷物が届いた
差出人の名は家族  恐らく単身働く彼を案じ 品を送ったのだろう
ただ 荷物が送られた 日付は 彼が去った日よりも ずっと後
真実を知らぬ 家族…… 真実を告げぬ 男……
なんとも 遣る瀬無い 思い出だ」


「始末書 
 わたくし……ライシ…イゾ…は ク……ネ炭鉱より寄贈さ…た
かなめいしを 紛…してしま……た」
『シーキンセツ 支払明細書 氏名 ソライシ ライゾウ』


「おとうちゃんへ(省略)
 ネーコちゃんを おとうちゃんに あげます どうか かわいがって あげてください
 ソライシ タカオ」


シーキンセツ宝物庫 ネーコちゃんの人形を見つける
「ライゾウの オジキ!」
「おお…… タカオ…… こんな 所で 寂しかったろう……
 済まなかったなあ…… さあ 一緒に 帰ろうなあ……」



その他


「せいふくを きた エネコのグッズ」「流行り物だったのかもしれないが、何故職場に」
なめねこ 1,980年代

「2画面の 古い ゲーム機が ある  自分のとは どこか 違うみたい…… 」
※ゲーム&ウオッチ・マルチスクリーン→1982年~

『明るく楽しい職場をつくるシーキンセツ10のメッセージ』(略)10.考えるな 働け 
※バブル期はこんな会社あったの?


次回は"ゲンシカイキ"についての考察をまとめる。









0 件のコメント:

コメントを投稿

はじめに

このブログについて ポケットモンスターシリーズの世界観について、1人のファンが非公式に考えたことをまとめていくブログです。自身の意見の全容がわかるように置いておくのが開設理由です。 主に オリジナル である ゲーム (株式会社ゲームフリーク開発の本編) を中心 に、派生ゲ...