2016年9月25日日曜日

20th祝いつくす解説 あくタイプ


数あるタイプの中でも特に解釈が困難なのが、あくタイプです。

あくタイプは悪なのか?

正義と悪という二項対立を思い浮かべると思いますが、正義タイプは存在しません。代わりに、噛み付くことは格闘技で反則技だったり、かくとうタイプにせいぎのつるぎという技があったり、せいぎのこころという、対あくタイプな特性もあるように、格闘タイプが正義側というイメージは感じ取れます。これはあくまでプロレスでいう所の「悪役レスラー」なギミックかと思います。

ポケモンはゲームもアニメも正義と悪という二元論に収まらない世界観で、あくタイプをもつポケモンが悪に染まった存在、と断定できるわけでもありません。

英語圏ではDARK typeとなりますが、バットマンのように"ダークヒーロー"という概念も存在しますね。映画のLEGOムービーではバットマンが「黒」大好きな中二病なヒーローとしてちゃかされていましたが、言ってしまえば厨二要素大好きな人が大好物な世界観、と定義してもいいかもしれません。動画のテイストとしては、ダークでワルな格好いい感じを目指しつつ、テーマとしては"悪"とは一体なにか、観る人に考えさせる方向性でまとめています。


善悪は、宗教や政治が成立したとき、その規律や法律に従うものと従わないもので判断されます。その境界線は時代や国ごと、あるいは人それぞれで異なるかもしれません。この世界で出会うものが、全て自分の思い描く善悪の規範に当てはまるとは限らない…そんな闇を"あくタイプ"とカテゴライズできるかもしれません。ポケモンにおける"あく"は、アンチ正義ではなく、アンチ二元論と言えるかもしれません。

『人造人間ハカイダー』貴様が正義なら 俺は悪だ! 名作です。

まずはブラッキー。DARK、月光、くろいまなざしといった要素が ザ・あくタイプ感を出します。開く蓮の花との対比が効いてます。以下4枚はじじねこさん担当。

ニューラは図鑑では獰猛、ずる賢いなど書かれ、ポッポの卵を捕食する習性などが描かれていますが、これらは単に生物として必要な本能です。人間の主観で 残酷で悪いもの と感じるその境界線をくすぐるのが、あくタイプなのかもしれません。背景の椿は花弁が散らずにボトっと「落ちる」ため、首が落ちるのを連想させ死のニュアンスも感じさせます。

チョロネコは困った人の反応を見たくて大事なものを盗む、と図鑑にあります。悪い子。
レパルダスの絵に描かれた紫陽花は、美しく冷淡、といったイメージでしょうか。

バルチャイには骨のおむつをはかせる習性。命が他の命の上で成り立っている象徴ですね。ぐるだぐさんに頭蓋骨がよく見えるような構図を考えて頂きました。

夜のヤミカラスは不吉の象徴…というのは人間が信じている迷信で、そこに居るのはカラスの勝手でしょ。美しい夜景と一緒に描いて下さったのは ゆずポンさんです。

コノハナとダーテングは大木に棲む森の神のイメージです。害を及ぼす荒ぶる存在も神様として祀るのは日本の神社でも多いですね。かっこ良く描いてくれたのは猫さんです。

骨で着飾るバルジーナ。巣も骨で作ります。Illustratorで作画しているのはビーロンさん。

カラマネロは、ポケモンで一番強力な催眠術を使う場面を。「ひっくりかえ」したデザインに見えますが、頭足類であるイカの体の仕組みをを考えるとこれが正しい向きとも言えるかもしれません。みちこさん担当です。

タイトルロゴは杯天さん担当。ロゴがおとす影が英語のDARK TYPEになっていてCOOL。
ゲッコウガ=サンはとんぼ返り、水手裏剣、畳返し。専用技も多くてスマブラにも出て アニメでもエースで人気投票第1位!かものさん担当。

 対象を悪と捉えるのは人の主観、悪は人間の側にこそあり。そんな人間にも信じて健気に付いきてくれるポケモンもいるわけです。ポケモンと人の間には悪も正義もなく、ただ共に戦う繋がりだけがあるんですね。BGMに挿入されるボイスサンプル"I'm your partner." は、この動画を象徴する一言で、曲に入れるのを考案したのはBGM担当のsampling INOさん。痺れます。前半はアオギリ戦、後半はフラダリ戦をアレンジしているのだと思います。

ギンガ団ボス・アカギとドンカラス。悪の首領に相応しいポケモンです。imaさん担当。

アクア団リーダー・アオギリとメガシンカするサメハダーは又旅にあさん担当。己の信念を貫いて行動していますが、ルビーサファイアのマグマ団と合わせて悪と正義が立場によって入れ替わっているのが、ポケモンシリーズの「悪」に対する俯瞰した見方をよく表しています。悪ボスに多いですが、アカギやアオギリどちらも「なつき進化」が条件のクロバットを所持しており、敵でありながらポケモンには懐かれている、というのが最大の萌えポイントです。

ゲストで四天王も。カリンはきくよしさん、ギーマはあぜみちとんびさん担当。


ポチエナは「悪戯」を働いています。なんて悪い子なんだ… 担当はハマチさん。
グラエナはポチエナとの対比で、獰猛な姿をビーロンさんに描いて頂きました。


ヤンチャムがあくタイプと一緒にいるとゴロンダに進化するのは悪友に影響を受けてグレてしまう感じがあって面白いですね。喧嘩番長は悪のレッテルを貼られているが実は正義感にあふれている、みたいなイメージで 実は狼男さんに描いて頂きました。

ズルッグ ズルズキンは、脱皮した皮で腰パンしている面白いデザインです。たむろしている不良をイメージしてテマさんに描いて頂きました。


シザリガーは縄張りの池から他のポケモンを追い出してしまう様子を描くため、コイキングに犠牲になってもらいました。ホウエン図鑑などでは外来種であること書かれていますが、XY図鑑では外国のポケモンという記載がないため、カロス地方が原産の可能性も考えられます。アメリカザリガニらしい星条旗なデザインですが、BWでは出現せず、BW2からの生息なのでイッシュにおいても外来種かもしれません。担当はbeldogさん

ノクタスは、旅人を襲う図鑑文章の習性を再現しています。砂漠での探索にうっかり日没まで夢中になってしまった遺跡マニアの命運はいかに… 角字さん担当。

メガシンカを得たヘルガーとアブソルはビーロンさん担当。メガヘルガーは地獄の番犬なイメージで格好いいですね。

アブソルは、その能力で災いを予知して人里に知らせに下りてきたのに、逆に災いを呼ぶポケモンとして誤解されてしまった、完全に濡れ衣な「わざわいポケモン」。あくタイプ要素が完全に人間側の主観イメージにしかないという事例です。人に忌み嫌われている様子と、人(四天王カゲツ)と絆を結んだを対比として用意しました。

ポケモンに育てられたという幼少期のNとゾロア。ローマ建国神話における、狼に育てられたロームルスとレムスという双子が、イッシュ建国神話のベースになっているかもしれません。

成長したN…かと思いきやゾロアークのイリュージョンでした。担当はハマチさん。

ポケモンシリーズに珍しく勧善懲悪の対象なプラズマ団の黒幕、調和を乱す者ゲーチス。モノズ〜サザンドラは彼の手持ちをイメージしています。
モノズは視力がなく手当たり次第噛み付くので、きっとゲーチスの衣装もボロボロになったんでしょう。担当はハマチさんです。
ジヘッドは、仲の悪いふたつの頭が、体の主導権を握るため争っている様子です。将来サザンドラに進化すると、脳みそはひとつの頭しか持たなくなるため、どちらかの意識が消えたことになるんですね。相手を滅ぼさないと進化できないという業を背負った哀しいポケモンです。背景はNの城、タマゴは"厳選"の跡を思わせ、なかなかに心がエグれる1枚です。

ジヘッド、サザンドラの担当は、みちこさん。BWのラストバトルで本性を表したゲーチスと手持ちのサザンドラです。自分で伝説のポケモンや英雄を盛り立てておいて『神と呼ばれようとしょせんはポケモン』と吐き捨てる台詞が印象的です。BW2ではサザンドラがやつあたりを覚えているというあたり、クロバットに進化させた他の組織のボスたちとくらべても、正真正銘のゲス野郎という感じが伺えます。あくタイプのポケモンの動画ですが、"悪"のクライマックスはここだといって過言ではないでしょう。

"悪役"を演じている役者のハチクマンが挿入されます。悪とはこの世に存在する要素ではなく、必要とされて生まれる役割にすぎないのかも。担当は あぜみちとんびさん。

幻のポケモン、ダークライは強力なナイトメア 劇場版アニメで見せた美脚と、悪夢のイメージを表現した背景はじじねこさん担当。
プラチナでの専用イベントで聞ける???「ダークライ……きみの ちからは つよい」の台詞の主が何者なのか、未だに謎に包まれています。

解き放たれしフーパは、戒めのツボより開放された真の姿。伝説祭りと称される劇場版アニメで多数の伝説のポケモンを召喚しているイメージで、にぼしさんに担当をお願いしました。

召喚されたポケモンのシルエットは各タイプの動画に登場するポケモンのイラストを借りてきました。ゲームでもORASにてホウエン各地の「幻の場所」にフーパのものと思われるリングが確認できます。そこで闘うことのできる伝説のポケモンは、戦闘BGMが多数の世代やゲームハードにまたがったオリジナル音源になっていますが、これは所謂「似て非なる異なる世界」からおでましした、という事なんでしょうか…?

タマゴグループドラゴンで竜の血をひき、ドラゴン軍団の一員であったギャラドスのメガシンカは、まさかのあくタイプでした。分類はきょうあくポケモン。与える者を理想としながら奪う側をとったフラダリを象徴するかのようなメガシンカポケモンでした。メガリングを強調するカットと、メガギャラドスの巨大さを強調するカット。担当は青波燦さん。

イベルタルは破壊を司る伝説のポケモンで、生き物の命を吸い取る"デスウイング"という技をもちます。ゲーム劇中でも目撃例が少なく、人々の間では戦争における死のイメージと混同されて伝承されています。イベルタルの死神のようなイメージは、ある宗教にとっての異文化異教徒の神が習合された場合、悪魔として扱われてしまうような、人間の都合から当てはめた性質かもしれません。担当のサボテリアンさんにそんな話をしながら案を練って頂きました。

TVアニメで登場した、主人公補正の権化、サトシゲッコウガ!動画のこの時点で、誰もそんな考えを持っているとは思いませんが、あくタイプ≒悪という関係を全て払拭する存在です。サトシは水が作り出した影として出演です。Laiさん担当。

ラストに元祖 悪の組織ロケット団。ムサシコジロウニャースのトリオと、サカキを中心にロケット団の面々を。前列はHGSSで固有の名前を得た幹部、後列はアニメに登場のキャラです。派生作品で登場するオリジナルロケット団員をどこまで拾えるか相談しながら、コウアサさんに描いて頂きました。「愛と真実と悪を貫く、ラブリーチャーミーな敵役」という口上がこの動画の全てを現しているような。


次回、悪の弱点を突くむしタイプです。
なぜそんなタイプ相性なのか、悪の組織ショッカーとバッタがモチーフの初代仮面ライダーの関係ぐらいしか思い浮かびませんが…

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