2016年8月22日月曜日

20th祝いつくす解説 フェアリータイプ

20thを祝いつくす動画、今回の解説は ポケモン20年の歴史の中で一番新しいタイプ、2013年のXYから登場のフェアリーです。

プロレスや怪獣など昭和キッズが夢中になったものがぎゅっと凝縮されたポケモンシリーズに、新たなターゲットとして女の子が好きなタイプ…が追加されたと捉えました。フェアリータイプのジムも女の子トレーナーばかりでしたし。

見た目はかわいい妖精さん、実はドラゴンも恐れる強者たち…という二面性をもって「あざといほどかわいい、美しい」を動画のテーマとしました。

ステレオタイプではありますが、前回のかくとうの漢の世界から、フェアリーの女の子の世界、というイメージでがらっと変えています。全体的に日曜朝の女児向けアニメのオープニング風テイストで構成しました。タイトルロゴも担当のサトウマミさんにそれっぽくニンフィアのリボンを模してまとめてもらっています。

かわいいは正義!という感じでモチーフを強調していきます。


フェアリータイプの登場

フェアリーは西洋の神話・伝承上の存在で、日本語では主に"妖精"と訳されます。ドラゴン技が無効という、ゲームバランス変革のために追加ような側面もありますが、「ようせい」の概念は実は金銀の頃から存在していました。

それはタマゴグループの"ようせい"、育て屋に預けるとタマゴが見つかる可能性のあるポケモンを分類したグループです。第二世代の頃から"ようせい"グループに属していて、かつXYからフェアリータイプに変更・追加された"たねポケモン"には以下がいます。

ピッピ プリン トゲピー ブルー マリル

特にピッピとブルーは 元々ようせいポケモンと図鑑で分類されています。今まで無かったのが不思議なぐらい、満を持してのフェアリータイプ登場、と言えます。バリヤードもフェアリー追加組ですが、タマゴグループは"人型"に属し、エスパーの動画出演します。


妖精の中の妖精、ということで動画の最初にブルーとグランブルをもってきました。どう見てもブルドッグですが、怖い顔が逆に女性に大人気という設定の妖精です。角字さんにかわいらしく描いていただきました。

プリンはノーマルで登場しましたが、もともとフェアリーの動画で初登場させる予定のものをバランスの都合で貸しました。ふくれっつらも可愛いです。プクリン共々担当はたすくさん。

 マリルはみずねずみポケモンとして、初登場時からポスト電気ネズミのポジションを担う気合を感じさせました。雪下さんに、とにかくかわいらしく描いてもらいました。対して進化後のマリルリの方には特性「ちからもち」のイメージを反映して頂きました。

ザ・月の妖精ピッピは、金銀のおつきみやまで見られるダンスイベントの動きを再現しています。ピクシーには"ゆびをふる"をしてもらいました。かなでさん担当。

トゲチックはチックなのでヒヨコ、恐らく天使のヒヨコのニュアンスで、トゲキッスでようやく天使になったと思われます。HGSSで金銀からアレンジされたタマゴに纏わるシナリオは、主人公が「特別なたまご」を孵したことがホウオウ、ルギアへ近づくのを認められる一因となっていました。「天使のたまご」ですね。

トゲピーは金銀発売よりはるか前にアニメ先行で登場しましたが、ポケモンカード初期ではトゲが毒を出す「とげたまポケモン」(現在はりたまポケモン)という分類だったり、そもそも何者なのかイメージが定まらなかったように見えていました。リメイクにて一周回ってその背景が熟成された印象です。トゲチックはえりねーさん、トゲキッスはcirnoさん担当です。トゲピーのタマゴはこの後孵ります。

妖精のイメージのルーツ

 フェアリーとは西洋では本来、不気味で恐ろしい存在として伝承され、時には悪さもする日本で言う妖怪のようなポジションでもあります。妖精写真などはUFO目撃、心霊現象並にオカルトな話題。

現代日本の「妖精さん」的なニュアンスはどこから来たのでしょうか。日本で"妖精"を印象づけたひとつにイギリスの挿絵画家シシリー・メアリー・バーカーの「花の妖精」シリーズの存在が見当たります。

1960年台から森永ハイクラウンチョコレートにオマケとして付属した「フラワーフェアリーカード」として花の妖精シリーズのイラストが描かれていました。当時集めた方も多いと聞きます。フラベベなど"花と共生する妖精"のイメージソースはここでしょう。

フェアリーカードをオマージュして各色の花を持ったフラベベ、フラエッテたちを登場させました。XYのキーパーソン「AZ」と彼が3000年間探し続けていた固有のフラエッテのストーリーも合わせました。
カードは抹茶さん、きたジョーさん、AZは黄龍神さんに描いて頂きました。


フェアリーの使い手「ふりそで」も入れておきたかったので壱一さんに描いて頂きました。
いたずらごころがやっかいなクレッフィ。アニメXYでもヒロインの目標であるプリンセスキーの象徴として登場していますが、鍵モチーフもなかなかに「女の子ターゲット」な要素です。鍵が揺らせるようなレイヤー構造でじっぺさんが描いて頂きました。


ニンフィアはタイトルロゴの構成にも使われたリボンがコンセプトなデザイン。既出のポケモンの追加進化系の登場は近年唯一のなかなかのレアケース。リボン結びを絆の結びつきに重ねあわせた、第六世代XYを象徴したポケモンでもあるでしょう。新要素ポケパルレでふれあう"仲良し度"の高さとフェアリータイプの技を覚えていることが進化の条件となります。

複数のイーブイ進化条件が重なってしまった場合の進化優先度はリーフィア・グレイシア >ニンフィア >エーフィ・ブラッキー のようです。担当はかなンボさん。


メレシーは0.1ct以下の小さなダイヤ、メレダイヤがモチーフ。宝石もフェアリータイプ感溢れるモチーフですね。石蕗らいしさんにキラキラにしてもらいました。


エルフーンはゲームでの戦術的なネタをたくさんつめこんでいます。やどりぎ・コットンガード・みがわり・アンコールと可愛い顔をしていやらしい攻撃をしかけてきます。担当のコウランさんがやりたいネタはまだまだあったようですが、短い尺の中で視認できるものに留めさせて頂きました。背景の秘密基地の小物もフェアリーイメージで統一で芸が細かいです。

フラージェスは誰にも見せること無く50年以上書き続けられた作品、ヘンリー・ダーガーの妖精画「非現実の王国」をオマージュしています。担当ぐれにゃんさんのアイディアです。

メガシンカしてフェアリーを得るタブンネとチルタリス。いやしのはどうを放つメガタブンネはcirnoさん、ふわふわもこもこなメガチルタリスはかなンボさんです。

マネネ、ププリン、ピィ、ルリリ、たまごからトゲピーが生まれる繋がりから、所謂「ベビーポケモン」で固めてみました。通常の"進化前"と異なりタマゴ未発見グループになるため、育て屋での繁殖が不可能です。言ってみればポケモンの幼体なんですね。赤ちゃん、子犬や子猫のかわいさは格別です。母性本能をくすぐる、という奴でしょうか。担当はmochi.さん。

カロス地方初登場としてフランスをイメージ?したスイーツと香水モチーフのポケモンも。

ペロッパフがホイップポップと混ざり合ってペロリームへ進化する場面をT.Kozakuraさんがアニメーションで表現してくれました。

香水がモチーフなシュシュプはすずねこさん、フレフワンは419gisuさんが担当。ただよう香りを表現してもらっています。シュシュプらのデザインソースとしてペスト医師のマスクが用いられているのはゲームフリークの恐ろしいところ。黒死病が蔓延した中世ヨーロッパでは、病原の瘴気を防ぐため、嘴状のマスクに香辛料を詰めたそうですがその効果は不明だとか…。結局どくタイプは弱点ですね。


メガシンカ変身シーン


 メガシンカのエフェクトは、変身ヒーローのそれよりも、魔法少女や変身ヒロインジャンルに近しい物を感じます。変身アイテムが宝石(メガストーン)だったり、ピンクに近いマゼンダ光の色、あるいは虹色のイメージからそう思うのかもしれません。フェアリータイプの動画ではそれら意識したオマージュを含めています。関係はないですがポケモンアニメの湯山監督、脚本の首藤氏が手がけている魔法のプリンセス ミンキーモモてのもありましたね。

クチートはあざむきポケモンの名の通り、油断させるあざといほどかわいいイメージから後ろ髪の大口をふりかざす恐ろしさへの二面性をわかりやすく押し出してみました。嘘泣きとか。

メガシンカシーンは「出ましたっ!パワーパフガールズZ」の独特な変身シーン演出を少し意識しています。パーツごとの短い尺で多面的な表情を見せるのに調度良かったのもあります。生㌔コンテ指定でたくさんの差分を描いていただいたクチートの担当はcirnoさんです。

サーナイトはチャンピオン・カルネの手持ちとしてメガシンカさせました。ムーンフォースならぬムーンプリズムパワーでメイクアップ。ゲーム内でもメガシンカ時に一瞬シルエットになる演出がありますが、"少女革命ウテナ"感を出してみました。

生㌔Pがある程度絵コンテを切って、それを元にぐれにゃんさんが作画してくださいました。カルネとサーナイトのキズナが耽美に描かれています。特筆すべきはコンテには指定の無かった美しいサーナイトの正面カット、なかなか難しいアングルですがお見事。



幻のポケモン、ディアンシーはゲーム原作内で登場するイベントが文字ベースしか無く、ソースを映画のイメージに頼るしかありませんでした。宝石を生成する能力、そのひとつがメガストーンとなってユリーカが所持していたと見られる描写などから、設定上もメガシンカと深い関係があるポケモンともとれます。

XYのオーパーツ・ヒャッコクの日時計との酷似する質感を持ちますが、その関連性はついに明かされることはありませんでした。メガシンカの絆を結ぶ相手として、アニメXYからサトシたち一行に登場してもらいました。



メガディアンシーは担当のharu_283さんに思いっきり「プリキュアっぽく」とお願いしました。祝いつくす動画制作当時の『Go!プリンセスプリキュア』の存在もメガディアンシーの設定「ロイヤルピンクプリンセス」と近しいものがあるかもしれません。キュアフローラ変身バンクそのものというより原画の志田直俊氏の作画エッセンスを模したそうです。


ラストは伝説のゼルネアス、リラックスモードからのアクティブモードへの変化、ジオコントロール発動まで、担当のゆげさんに複数カット描いていただきました。XYゼルネアス戦の背景の謎植物や月がゼルネアスの神々しさを引き立てます。

本当は一番最後にアニメのオープニングによくある、キャラ集合ラストカット、みたいなので〆たかったのですが、時間的に手がつけられなかったのが悔しいですね。
参考:2015年秋アニメに『よくある演出のOP』がどれだけあるのか調べてみた
アニメオープニングの構成っぽさというのも意識していました。


BGMアレンジ

XY自転車の曲をベースに、"ニチアサ女児アニメのオープニング曲感溢れるアレンジ"をお願いしました。

XYの視線!ふたごちゃん、金銀自転車や、おつきみやまピッピダンスのBGMなどもチラっと組み込まれています。担当は大丈夫Pです。

次回は美しいフェアリータイプを穢してしまう、どくタイプの動画について解説します。



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