ポケモンで有名な都市伝説。
あるあさのこと。ゲーム「赤・緑」のポケモン図鑑で読める、ユンゲラーというキャラクターの説明文だ。ポケモンの正体が、実は人間だったというセンセーショナルな内容から、話題にあがりやすい。
ちょうのうりょく しょうねんが
ベッドから めざめると
ユンゲラーに へんしん していた。
実はこの文章には続きが存在しているのだ。
「ある朝のこと。超能力少年がベッドから目覚めるとユンゲラーに変身していた」ユンゲラーを題材にした小説『変身』が、<第2回>ポケモン文学賞を受賞したのは記憶に新しい。ピカチュウが"アイドルのポケモン"だとすれば、ユンゲラーは"玄人好みのポケモン"といえる。/『ポケットモンスター図鑑』(1996)
なんと、少年がユンゲラーに変身した話は、小説の架空の出来事だったのだ……
出典もなしに引用、誤解を与える形で切り取るとは、"図鑑"にあるまじき記述!
伝説の攻略本『ポケットモンスター図鑑』
画像左が表紙、右が裏表紙 |
この詳細な文章が掲載されている攻略本『ポケットモンスター図鑑』は1996年4月5日発行。ゲームが発売されたのは同年2月27日。うるう年だったので1ヶ月とちょうど1週間後に出た、攻略本としては最古の部類になるだろう。当ブログでも度々紹介しているポケモン考察には欠かせないバイブルだ。
初代ポケモンがブームになってからは沢山の攻略本が出版されているが、ポケモンの世界観や生態描写そのものが濃厚に掲載されている書籍はこの他に無いだろう。全143頁中、半分の76頁は読み物と開発スタッフのインタビューだ。ゲームの登場人物であるオーキド博士やマサキによる講義も掲載されている。
ポケモン原作ゲームの開発元、ゲームフリークがしっかり関わっている本でもある。制作者自身による世界観の補完的な資料集といって良いだろう。
ポケモンの(最初の)公式イラストを最初に描き起こしたのも、この本のためだと、ゲームフリークの杉森 建氏もインタビューで述べていた。(聞き手は とみさわ氏)
『ポケットモンスター図鑑』のために かなりの手数がかけられていることがわかる。ー最初に公式イラストが必要になったのって、 何のためだったんでしょう?
杉森 『ポケモン赤・緑』の最初の攻略本で、アスペクトから出た『ポケットモンスター図鑑』に全ポケモンのイラストを掲載したいと 言われて描いたのが最初ですね。でも、その段階ではポケモンの原画ってドット絵しか存在しなかったので、そのドット絵から全部自分の絵として描き起こしていったんです。ちょっと気にくわないところは修正したりして(笑)それで全部自分のキャラクターらしくしたのが、以後、僕がすべてのポケモンのテイストを統一させるようになったきっかけですね。/『杉森建の仕事』(2014)
ちなみに 初代ユンゲラーの図鑑説明文が小説の引用であることが、その後の原作ゲームや他の媒体で触れられたことはなく、さらに後のシリーズではこう書かれている。
ちょうのうりょくの けんきゅうを てつだっていたエスパーしょうねんが あるとき とつぜんユンゲラーに なったと うわさ されているのだ。/エメラルド(2004)出典不明の情報が噂となりいつのまにか"説"として扱われる…ポケモン図鑑による風説の流布が、現在進行形で進行していることがわかる。
エスパーしょうねんが じぶんの なかの サイコパワーを おさえきれなくなり へんしんして しまったとの せつも。/サン(2016)
(2023.08追記)ポケモンLegendsアルセウスで古い時代にも ユンゲラーへの変身譚が存在したことが明かされた。
神通力有す童が変容した姿と噂あるも真偽不明。手に持つ匙は脳波を高める効能ありと推察す。/Legendsアルセウス(2022)初代の図鑑文章が引用であることには変わりがないが、その小説『変身』自体が民話として既に存在する変身譚から着想を得た内容なのかもしれない。(追記おわり)
長く続いたシリーズの中で言及されなくなったり、「中国」のような実在の地名が「東洋」に書き換えられたりといった変更は存在する。
『ポケットモンスター図鑑』にしか記載されていない数々の「裏設定」を紹介しつつ、現在のポケモンシリーズ全世代の図鑑文章と比較して、今でも通用するのか検証していこう。
赤緑より詳しく書かれている情報
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