2021年1月11日月曜日

裏設定の宝庫『ポケットモンスター図鑑』

ポケモンで有名な都市伝説。

あるあさのこと。
ちょうのうりょく しょうねんが
ベッドから めざめると
ユンゲラーに へんしん していた。
ゲーム「赤・緑」のポケモン図鑑で読める、ユンゲラーというキャラクターの説明文だ。ポケモンの正体が、実は人間だったというセンセーショナルな内容から、話題にあがりやすい。

実はこの文章には続きが存在しているのだ。

「ある朝のこと。超能力少年がベッドから目覚めるとユンゲラーに変身していた」ユンゲラーを題材にした小説『変身』が、<第2回>ポケモン文学賞を受賞したのは記憶に新しい。ピカチュウが"アイドルのポケモン"だとすれば、ユンゲラーは"玄人好みのポケモン"といえる。/『ポケットモンスター図鑑』(1996)

なんと、少年がユンゲラーに変身した話は、小説の架空の出来事だったのだ……
出典もなしに引用、誤解を与える形で切り取るとは、"図鑑"にあるまじき記述!


伝説の攻略本『ポケットモンスター図鑑』


画像左が表紙、右が裏表紙

この詳細な文章が掲載されている攻略本『ポケットモンスター図鑑』は1996年4月5日発行。ゲームが発売されたのは同年2月27日。うるう年だったので1ヶ月とちょうど1週間後に出た、攻略本としては最古の部類になるだろう。当ブログでも度々紹介しているポケモン考察には欠かせないバイブルだ。


初代ポケモンがブームになってからは沢山の攻略本が出版されているが、ポケモンの世界観や生態描写そのものが濃厚に掲載されている書籍はこの他に無いだろう。全143頁中、半分の76頁は読み物と開発スタッフのインタビューだ。ゲームの登場人物であるオーキド博士やマサキによる講義も掲載されている。


ポケモン原作ゲームの開発元、ゲームフリークがしっかり関わっている本でもある。制作者自身による世界観の補完的な資料集といって良いだろう。


執筆の一人とみさわ昭仁氏は、「ルビー・サファイア」〜「ハートゴールド・ソウルシルバー」までシナリオを担当したスタッフで、最新作「ソード・シールド」でも久々にシナリオに協力されている。

ポケモンの(最初の)公式イラストを最初に描き起こしたのも、この本のためだと、ゲームフリークの杉森 建氏もインタビューで述べていた。(聞き手は とみさわ氏)

ー最初に公式イラストが必要になったのって、 何のためだったんでしょう? 

杉森 『ポケモン赤・緑』の最初の攻略本で、アスペクトから出た『ポケットモンスター図鑑』に全ポケモンのイラストを掲載したいと 言われて描いたのが最初ですね。でも、その段階ではポケモンの原画ってドット絵しか存在しなかったので、そのドット絵から全部自分の絵として描き起こしていったんです。ちょっと気にくわないところは修正したりして(笑)それで全部自分のキャラクターらしくしたのが、以後、僕がすべてのポケモンのテイストを統一させるようになったきっかけですね。/『杉森建の仕事』(2014)

『ポケットモンスター図鑑』のために かなりの手数がかけられていることがわかる。


ちなみに 初代ユンゲラーの図鑑説明文が小説の引用であることが、その後の原作ゲームや他の媒体で触れられたことはなく、さらに後のシリーズではこう書かれている。
ちょうのうりょくの けんきゅうを てつだっていたエスパーしょうねんが あるとき とつぜんユンゲラーに なったと うわさ されているのだ。/エメラルド(2004)
エスパーしょうねんが じぶんの なかの サイコパワーを おさえきれなくなり へんしんして しまったとの せつも。/サン(2016)
出典不明の情報が噂となりいつのまにか"説"として扱われる…ポケモン図鑑による風説の流布が、現在進行形で進行していることがわかる。

(2023.08追記)ポケモンLegendsアルセウスで古い時代にも ユンゲラーへの変身譚が存在したことが明かされた。
神通力有す童が変容した姿と噂あるも真偽不明。手に持つ匙は脳波を高める効能ありと推察す。/Legendsアルセウス(2022)
初代の図鑑文章が引用であることには変わりがないが、その小説『変身』自体が民話として既に存在する変身譚から着想を得た内容なのかもしれない。(追記おわり)

長く続いたシリーズの中で言及されなくなったり、「中国」のような実在の地名が「東洋」に書き換えられたりといった変更は存在する。

『ポケットモンスター図鑑』にしか記載されていない数々の「裏設定」を紹介しつつ、現在のポケモンシリーズ全世代の図鑑文章と比較して、今でも通用するのか検証していこう。


赤緑より詳しく書かれている情報
ニドラン♀は進化するとタマゴが産めない
野生の産卵とタマゴシステム
ミニリュウとポケモンブーム
オーキド博士のフルネーム
ゲーム完成時点の世界観
アニメ初期≒小説版と現実の動物
東京タワー?現在避けられる言葉

赤緑より詳しく書かれている情報


『ポケットモンスター図鑑』p8の序文「はじめに」には、”すべての種類が見つかったわけではありません"と断りが入っている。

本書はオーキド博士のデータをもとに、現在見つかっている150種類のポケモンを草原・山・水辺…などの生息地別に分類しています。またポケモンの解説文については、現時点でわかっていることのみを記しました。ポケモンはすべての種類が見つかったわけではありません。今後も研究を重ね、新しいポケモンが見つかり次第、増補版を出版してこうと考えています。

あくまで初代が発売されて間もない時点でまだ未知の部分ばかり…というていで書かれているのだ。著者もその後6倍もの発見、25年も増補され続けていくとは考えもしなかっただろう。この断定してしまわない作風が結果的にも良かったのではないかと思う。

ユンゲラーのように、赤緑の図鑑文章に+αで情報が付加されているものをいくつかピックアップしてみよう。ひらがな(赤緑)→漢字(ポケットモンスター図鑑)の順に並べ、追加差分を太字にする


リザードン
ちじょう 1400メートル までハネを つかって とぶことができる。こうねつの ほのおを はく。
リザードの進化形。地上1400mまで羽を使って飛ぶことができる。富士山の中腹でリザードンのものと思われる糞が見つかったので、この1400mという数字が確定された。岩をも溶かす高熱の炎を吐く。
富士山という初期特有の実在地名やリザードンの糞の登場は濃ゆい。そして飛行高度の1400mという数値が割り出された根拠まで存在していたのは驚きだ。図鑑中のポケモンの糞の描写には以下のような例がある。
ダルマッカの フンは あついので むかしの ひとは ふところに いれて からだを あたためていたのだ。/ホワイト
ディグダが すむ とちは たがやされ フンで ゆたかに なるため おおくの のうかが たいせつに そだてている。/ムーン
バクガメス はなの あなから ほのおや どくガスを ふく。 フンは ばくはつぶつで いろんな つかいみちが ある。/ムーン
アクジキング きけんせいぶつ ビーストの いっしゅ。 つねに なにかを くらっているようだが なぜか フンは みはっけん。/ムーン
マタドガス(ガラルのすがた) たいきの きたない せいぶんを きゅうしゅうし きれいな くうきを フンの かわりに はきだしている。/ソード

 

トランセル
かたい カラに つつまれているがなかみは やわらかいのでつよい こうげきには たえられない。
キャタピーの進化形。かたい殻に包まれているが、中身はやわらかいので、強い攻撃には耐えられない。 しかも変態の最中なので、すばやい動きは苦手だ。

一代でのポケモンの進化は、生物学的には進化ではなく"変態"であるというのは、今では全国の理科や生物の講義でネタに使われているのかもしれないが、制作側も無知で"進化"の単語を使っているわけではなさそうだというのが伺えるだろう。開発中はイナダがブリになるように成長によって名称が変わる"出世魚"から着想したと書籍「遊びの世界基準を塗り替えるクリエイティブ集団 ゲームフリーク」(2000)」で語られている。


コンパン
くらやみでも めが レーダーのやくわりをして かつどうできる。めから ビームを はっしゃする。
暗間でも目がレーダーの役割をして活動できる。そしてその目からはビームを発射する。昆虫の仲間であることは確認されている。進化の可能性があるらしいが …。

モルフォン
はねに りんぷんが ついていてヒラヒラと はばたくたびにもうどくの こなを ばらまく。
羽に鱗粉がついていて、 ヒラヒラと羽ばたく度に猛毒の粉をばらまく。生息数が少ないため、 なかなか見つけることができない。サファリゾーンに住むといわれているが、その幼虫さなぎ時代は謎に包まれている。

コンパン→モルフォンは進化系列だが、本書ではまだその繋がりにたどり着いていないという研究段階で、この2種はページを跨いで離れた場所に記載されている。攻略本としてあるまじき情報の不完全さだが、幼虫さなぎ時代というミスリードも含めて、読み物としてはワクワクする。"バタフリーとモルフォンのデザイン取り違え説"という噂も囁かれるが、本書を読む限りはその類似も含めて、しっかり意図的な配置なのではないかと思わされる。



アーボック
おなかの もようが こわいかおに みえる。よわいてきは そのもようを みただけで にげだしてしまう。
アーボの進化形。もちろん、アーボ同様、毒蛇である。おなかの模様がおそろしい顔に見えるので、気の弱い敵はその模様を見ただけで逃げ出してしまう。見つめるだけで敵を麻痺させてしまう「へびにらみ」が得意技である。 道で出会ったら、目をそらした方が良い。ラッタとは犬猿の仲で、まるでハブとマングースのように、壮絶な戦いになる。

説明文の他におなかの模様には、実在するコブラのように地域差があることをイラストで図示している。これは後の図鑑説明文で触れられ、リアルタイムに研究が進んでいる。(Let'sGO!ピカチュウでまた6種類に戻ってるけど)

おなかの おそろしい もようは ちいきに よって なんしゅるいか パターンが あるという ウワサだ。/青(1996)
おそろしげな おなかの もようは けんきゅうのけっか 6しゅるいほど パターンが かくにんされている。/ピカチュウ(1998)→Let'sGO!ピカチュウ・イーブイ(2018)
さいしんの けんきゅうで おなかの もようは 20しゅるい いじょうの パターンが あることが はんめい。/ウルトラサン(2017)

ハブとマングースをモデルにしたポケモンは後の第三世代にハブネーク・ザングースとして登場する。初代は、少ない種類(151)で出来るだけ多様な生き物の特徴を詰め込もうとする姿勢が見られ、ハブの話題もその欲張り設定のひとつだろう。あとなぜかアニメにマングースが登場する回(20話 1997年)がある。


コイキング
ちからも スピードも ほとんどダメ。せかいで いちばん よわくてなさけない ポケモンだ。
カもスピードもほとんどダメ。何かあればすぐ「はねる」。世界で一番弱くてなさけないポケモンだが、 最新の研究で驚くべき事実が発見された。コイキングの体から、竜の細胞が検出されたというのだ。今後の研究に期待が集まっている。

ギャラドス
ひじょうに きょうぼうな せいかく。くちからだす はかいこうせんはすべてのものを やきつくす。
非常に凶暴な性格。口から出す「はかいこうせん」は、すべてのものを焼きつくす。海の底、 深いところに生息しているらしく、めったに見つかることはない。最新の発見例は35年前。その死骸が浜辺に打ち上げられたことがある。雑食性で、牙は岩石も噛み砕く。鱗は鋼鉄のようにかたく、それを加工した指輪などの宝飾品は驚くほど高価である。

コイキング→ギャラドスもまた、初代でも屈指のギャップ進化なので、その情報が伏せられて掲載されている。今では当たり前だが、判明前の時点の様子が描写されるのはレアだ。
ギャラドスの、発見例が少なく最新の確認が死骸だけ、災害のような存在で伝承でのみ知られている、UMA感がたまらなく良い。これがどこにでもいるコイキングの進化系だとわかった時の盛り上がりを想像するだけで楽しい。


カラカラ
しにわかれた ははおやの ほねをあたまに かぶっている。さびしいときおおごえで なくという。
死に別れた母親の骨を頭に被っている。寂しいとき大声で鳴く。その骨が自分の頭にぶつかったときカラカラと音がするため、その名前がついたといわれる。

しにわかれた ははおやを おもいだし ないてしまうとき あたまに かぶった ホネが からからと おとを たてる。 /ダイヤモンド(2006)

骨の揺れる音についての言及はその後もあったが、「からから」と音をたてる描写は第4世代「ダイヤモンド」の全国図鑑で初めて登場する。さらにそれが名前の由来であったことは、ゲームの図鑑だけでは判明しない


エレブー
つよい でんきが だいこうぶつでおおきな はつでんしょ などにしばしば あらわれる。
強い電気が大好物で、大きな発電所などにしばしば現われる。ストライクと同様に、捕獲されることはめったにない。ストライクもエレブーも色を識別する能力があり、特に赤色を好む習性がある。

「赤・緑」の2バージョンで発売されたが、「赤」にしか登場しないポケモンが、赤を好む習性があるからそのバージョンに出現する…という理由付けがあったのは本書が初で、その後ゲーム内で触れられたことはない。 「緑」に登場するカイロスには”緑色を好むらしい”と書かれている。
アニメの42話「たいけつ! ポケモンジム!」でこの設定が拾われている。ストライクとエレブーが赤色に反応して興奮してしまう…という描写のために、サトシのピカチュウにケチャップをもたせた事の方が有名かもしれない。


ポリゴン
さいこうの かがくりょくを つかい ついに じんこうの ポケモンを つくることに せいこうした。
1995年、ポケモンやそのグッズなどを研究開発しているシルフカンパニーが、最高の科学力を使い、人工のポケモンをつくることに成功した。 非常に珍しいポケモンだが、なぜか、スロットの景品交換所で取り引きされるようになった。現在、政府により、その調査が進められているが、一日も早い解明が待たれる。

誕生したのが"1995年"とはっきり書かれているが、劇中の年代設定が、ゲーム発売と同年で、その1年前というつもりで書かれたのだろう。初代の20年後に発売されたサンでは、およそ20年前に生み出されたと書かれており、リアルタイムに遊んできたプレイヤーにとって辻褄の合うメタ描写だ。赤緑は一度リメイクを挟んでいる上、1995年が西暦なのか定かではない。西暦らしき年代はオメガルビー・アルファサファイアでも登場する。

およそ 20ねんまえに とうじの かがくりょくを けっしゅうし うみだされた じんこうの ポケモン。/サン(2016)

ゲームをプレイすれば察せられるが、シルフカンパニーとゲームコーナーを運営するロケット団に繋がりがあったらしいことがより強く示唆されている。政府による調査を映像化したのが、ポケモンジェネレーションズ エピソード2(2016)での描写なのかもしれない。


カイリュー
おおきな たいかくで そらを とぶ。ちきゅうを やく16じかんで 1しゅう してしまう。
大きな体格で空を飛び、地球を約16時間で1周してしまう。<破壊の神>の化身といわれる。

破壊の神の化身という二つ名があったらしい。ゲームでは四天王ワタルのカイリューによる「はかいこうせん」が印象深いだろう。後年の図鑑では、海の化身と呼ばれており、破壊の神の方は今活きていないかもしれない。 

あれくるう うみも ものともせずに とんでいく。 そのすがたを みかけた せんちょうは うみのけしんと よんだ。/ウルトラサン(2017)
うみの けしんと よばれる。 カイリューがたの ちょうぞうを へさきに つける ふねも おおい。/シールド(2019)


ピカチュウ
ほっぺたの りょうがわにちいさい でんきぶくろを もつ。ピンチのときに ほうでんする。
森に住み、木の実などを主食としている。数が少なく、なかなか見つけることができない。 ほっぺたの両側に小さい電気袋を持ち、 ピンチのときに放電する。優しい性格で、知能が高く、愛矯もあるので、研究者のあいだでも人気ナンバーワンのポケモンだ。ピカチュウは進化するとライチュウになるが、外見が変わってしまうのがイヤで進化させない人も多い。

ライチュウ
ピカチュウの すがたが すきな トレーナーも おおく なかなか すがたを みかけない ポケモン。/ウルトラムーン

ピカチュウ推しがすさまじいが、ブームもアニメもまだ始まっていない時期だ。研究者の間で人気ナンバー1というのはユーザーの反響を描写したわけではなく、開発中の社内人気投票の結果のことを言っているようだ。(ピカチュウは大福?初めて明かされる誕生秘話)

ウルトラムーンのライチュウの説明文も本書の想定していた"ピカチュウが人気な世界"の延長線上として書かれているのかもしれない。


全ては紹介しきれないが、このように後のシリーズやアニメ化の際に拾われるネタの原点が本書には多く詰め込まれている。



ニドラン♀は進化するとタマゴが産めない


育て屋などの施設にポケモンの♂♀を預けるとタマゴが見つかることがある。
性別不明のポケモンはメタモンと組み合わせることで見つかることがあるが、
アンノーン、伝説・幻のポケモンは見つからない。これらは「タマゴみはっけんグループ」という。



タマゴみはっけん例外として 異種どうしの半身が合体しているガラル地方の化石のポケモン、ピチューやトゲピーなどの性的未熟な幼体を思わせるポケモン(ベイビィポケモンとも呼ばれる)に加え、ニドリーナ、ニドクインも含まれているのだ 。それがゲーム内で触れられたことはなく、ただ産まれない仕様になっているだけである。

『ポケットモンスター図鑑』にはニドラン系の繁殖について詳しい記述がある。

ニドラン♀
小さくても毒針の威力は強烈である。メスの方が角が小さい。毎年春に繁殖期があり、夏の終わりに2個卵を産み、その2週間後、オスとメスが孵化する。ニドラン赤ちゃんの体長は10cm。

ニドリーナ
メスなので性格は温厚だ。口から出す超音波は相手を惑わす力がある。ニドラン♀の進化形だが、ニドリーナになると、卵を産む能力はなくなる。

ニドラン♂
耳が大きく遠くの音を聞くとき、羽ばたくように動き、怒ると毒針を出す。繁殖期には角の色が七色に発光し、メスにアピールする。大きい角の方がメスにウケるらしい。

ニドリーノ
怒りやすい性格。 発達した角を振りまわして、ダイヤモンドも串刺しにする。ニドラン♂の進化形だが、ニドリーナと違って繁殖能力がある

ポケモンのタマゴがゲームシステムとして実装されたのは、この文章が書かれたより後の、ゲーム第2世代『金・銀』(1999) からである。ニドラン♀が"進化"とひきかえに繁殖能力を失うことは、後のゲームの設定に反映するほどコダワリの生態描写だったのだろう。なにか意識したモチーフが存在するのかは謎。「2個卵を産む」のはまるでヤモリのようだ。

第8世代『ソード・シールド』(2019)で、いくつかのポケモンの「タマゴグループ」が見直される変更(「ふていけい」のサーナイト系に「ひとがた」付加、「むし」のフライゴンに「ドラゴン」付加など、今までそうじゃなかったのが不思議だった種類が、ある意味自然になった。)があったが、冠雪原にも生息しているニドリーノ・ニドクインは、『ポケットモンスター図鑑』準拠の「タマゴみはっけん」のままであった。

ニドランの繁殖は、初代の時点からブレずに一貫している点としても象徴的な描写である。本書に書かれた情報が原作チームによって用意され、できる限り今も引き継がれていると理解してもらえるかと思う。



野生の産卵とタマゴシステム


そもそもゲームで手に居入る「タマゴ」は、「ねずみポケモン」など哺乳類のような外見のピカチュウも生まれてくるので、ゲームのシステムが優先された"テキトーな設定"なのではないかという疑惑もある。

そもそも育て屋(預かり屋)で見つかる「タマゴ」以外に、野生のポケモンはどのようにして繁殖しているのだろうか。まずゲームに「タマゴシステム」が登場していなかった時代に書かれた『ポケットモンスター図鑑』の記述を確認してみよう。(おなかにタマゴをかかえるラッキー、タマゴに似ているというタマタマは除く)

アーボ
舌をチロチロさせて、危険を感じとる。肉食で、何でもほとんど噛まずに飲み込む。ポッポやオニスズメの卵が大好物で、コラッタもたまに被害に遭う。一度、コラッタを飲み込めば、ひと月は何も食べないで済む。何度も脱皮を繰り返して成長し、冬は暖かい森の土の中で冬眠する。夏は草地で見かけることが多い。/ポケットモンスター図鑑(1996)

アズマオウ
トサキントの進化形。ドリルのように尖っている角で岩肌をくりぬき、自分の巣をつくっている。毎年、 産卵のため、川をさかのぼる。/ポケットモンスター図鑑

タッツー
ぜんまいのようにクルクル巻かれたしっぽで、 体のバランスをとる。また危険を察知すると、口からスミを吐くことがある。毎年春、数千個の卵を海草に産みつけるが、そのほとんどはトサキントの餌になってしまう。オスが子育てをする、珍しいポケモンだ。/ポケットモンスター図鑑

タッツーはタツノオトシゴを意識したポケモンだが、実際のタツノオトシゴもオスが子育て(こちらは腹の袋に産卵し"実質オスが妊娠")する。進化系のシードラの方であるが、後にゲーム本篇でも拾われている。

シードラ  
オスが こどもを そだてる。そのとき ちかづくものは もうどくの トゲを つかって おいはらう。/クリスタル(2000)

タマゴと繁殖に関わる文章を、伝説や神話、いつもタマゴが描かれているラッキー系を除いて、抜き出してみよう。
トサキント・アズマオウ
タマゴをうむ じきになると かわや たきを のぼってくる トサキントの しゅうだんの すがたが みられる。/ ピカチュウ(1998)

さんらんの じきに なると かくちから アズマオウが あつまり かわのいろが まっかに そまる。/金
ツノで かわぞこの いわを くりぬき すをつくるのは うみつけた タマゴが ながされないように するためだ。/銀(1999)
タマゴを まもるため オスと メスは こうたいですの まわりを およぎまわり パトロールする。タマゴが かえるまで ひとつきいじょう つづく。/サファイア(2002)
かわぞこの いわに ツノで あなを あける。タマゴが きゅうりゅうに ながされたり てきにおそわれない ための かしこい くふう。/エメラルド(2004)
あたまの つので かわぞにある いわを くりぬいて すを つくる。たまごを いのちがけで まもる。/ダイヤモンド(2006)
 

ペリッパー
ちいさな ポケモンや タマゴを クチバシにいれて はこぶ そらの はこびやだ。うみべの けわしい がけに すを つくる。/ルビー
かいめん すれすれを とび エサを みつけるとおおきな クチバシで かいすいごと すくいとる。クチバシの なかに タマゴを いれて まもる。/エメラルド
くちのなかに ちいさなポケモンや タマゴをいれて あんぜんな ばしょに とどけてくれる そらの はこびや。/プラチナ

クルミル
タマゴから かえると ハハコモリに ふくを つくってもらい きせられる。フードで あたまを かくして ねる。/ブラック
ハハコモリ
おちばが はっこうする ねつで タマゴを あたためる。クルミルに はっぱで おくるみを つくる。/ホワイト

アイアント
すの おくふかくに タマゴを うむ。 クイタランに おそわれると おおきな アゴで かみついて はんげき。/ソード
  

おおきな アゴは がんせきをも かみくだく。 サダイジャから タマゴを まもるため むれて たたかう。/シールド


初代から剣盾まで、魚・鳥・虫系は野生でも卵生で繁殖する様子が描写されている。
タマゴを狙うポケモンの説明文もみてみよう。

アーボ 
まったく けはいを かんじさせずにいどうする。ポッポや オニスズメのたまごを まるのみ してしまう。/青

パラス
ムシから エキスが すえなくなると せなかのキノコは ムシの タマゴを みつけて ほうしを うえつける。/クリスタル

ニューラ
どうもうな せいかく。おやの ポッポを おいはらいすに のこされた タマゴをたべる。/銀
てあしの カギヅメを つきたてて きを のぼる。おやの いない すきを ねらって きの うえにある す から タマゴを ぬすんで たべる。/ダイヤモンド
ずるがしこく いっぴきが おやを おびきよせ もういっぴきが タマゴを とるという チームプレーも みせる。/プラチナ
ずるがしこく どうもうな せいしつ。おやが いない スキに すあなに しんにゅう。 タマゴを ぬすみだす。/サン
ツメで タマゴに あなを あけて なかみを すする。 ブリーダーに にくまれ くじょ されることもある。/ムーン
チームプレイで とりポケモンの すあなから タマゴを ぬすみだすが だれが くうかで ケンカになるのだ。/ ウルトラサン

フォクスライ
みがるな からだと するどい ツメで エサや タマゴを ぬすんで まわる。 パルスワンが てんてき。/シールド

明記されないものもあるが、とりやムシのように現実で卵生のものは確認できる。

以下のように「こどもをうむ」と書かれた説明文も(タマゴがゲームに実装された金銀時点で)存在する。明言されていないが、この場合は、産卵をしているとは考えづらい。胎生の可能性もあるのではないだろうか。

コラッタ どんな ものでも たべるので エサとなるものが ある ばしょに すみついて どんどん こどもをうむ。/金
ミルタンク こどもが うまれたときにしぼられた ミルクには いつもよりえいようが たっぷり つまっている。/銀


これに関しては、『金銀ポケモンずかん 任天堂公式ガイドブック』巻末の「ポケモンジャーナルより転載」とされた資料が参考になるだろう。末尾を引用する。
追加資料:ウツギ博士からオーキド博士に宛てた手紙の一部 
(前略) しかし、つい最近、わたしはあることに着目しました。それは「タマゴ」の殻です。じつはポケモンのタマゴの殻は、土や植物の繊維などで作られているように思えるのです。タマゴの殻というより、どちらかといえば「巣(ポッポやオニスズメたちの住処の「巣」です)」に近いように思えます。
 これはわたしの仮説、いえ憶測でしかありませんが、もしかしたらポケモンの「タマゴ」とは、幼児を安全に育てるための「保育器」として作られたのではないでしょうか。つまりポケモンたちは、「保育器」を自分たちの手で作り、その中に生まれたばかりの子供を入れて育てている。このようには考えられないでしょうか?
もともと「タマゴ」とは、未発育の子供を安全に育てるためのものですが、もし、ポケモンたちが「タマゴ」を自ら作っているとしたら・・・・・・。
この考えに固執しているわけではありません。「ウソッキーを見て森を見ない」では、研究者として失格ですから。しかし、この憶測も視野に入れつつ、調査を続けていきたいと思います。

つまり、現実でいうところの哺乳類のような見た目のポケモンも含めて全てが卵生であるとは断定されていない、ゲームで見つかるタマゴはあくまで親となったポケモンが幼体を守るために作った「保育器」なのだと考えてよい。そのような解釈ができる余地を用意してくれているのだ。

育て屋などで貰えるタマゴは一貫して「見つかる」と表記されており、図鑑の中で産卵、生むと表されているタマゴは野生での自然な繁殖手段を描写しているのかもしれない。

第6世代「X・Y」でもタマゴの解釈に関した台詞を聞くことができる。『金銀〜公式ガイドブック』の考え方は原作において今も活きていると受け取れる。

育て屋さんで 見つかる ポケモンの タマゴらしき もの……
厳密には タマゴ ではなく ポケモンの ゆりかご らしいですね/X・Y ヒヨクシティ



ミニリュウと"ポケモン"ブーム



ポケモンシリーズは今では8つの地方(舞台)が登場し、それぞれに壮大な伝説や歴史が描かれたため、初代の"カントー地方"は比較的地味な舞台に見えるだろう。
しかし、第1作カントー地方が"はじまりの地"だと思わせる出来事が『ポケットモンスター図鑑』では描かれている。

ミニリュウ
こどもでも しんちょうは2メートル いじょう。だっぴをくりかえして おおきくなる。
伝説のポケモンは実在した!偶然サファリゾーンの池で釣り上げてしまった客は一躍時の人となり、ニュースは全世界を駆け巡った。この発見から、伝説のポケモンは「すべて実在する」と考える人が多くなり、ポケモン探検ブームが起こった。ミニリュウは、子どもでも身長は2m近くあり、脱皮を繰り返して大きくなる。

伝説や幻の存在と言われていたミニリュウの発見(一般認知)が、世界中のトレーナーを探検・冒険に駆り立てるきっかけになったという。
もしかしたらこの発見によって後の世代に登場する人物たち、アオギリやマツブサがグラードンやカイオーガのことを、アカギがディアルガ・パルキアの実在を確信して、組織をたちあげたのかもしれない。

補足として『ポケットモンスター公式ファンブック』(下図)を紹介。こちらはTVアニメ放映開始直後の1997年5月に発行された、ゲームフリーク杉森建氏の手によって151種の公式イラストが俗に言う"青版"にすべて更新されたタイミングの書籍である。新規イラストに付いた各ポケモンの説明文は『ポケットモンスター図鑑』に準拠しており、ニドリーナが繁殖能力を失うことにも触れられている。ミニリュウの記述は以下のとおり。

発見されたときは、伝説のポケモンが実在したことで大きな波紋を呼んだ。子どもでも2m近くあり、脱皮を繰り返して成長する。

図鑑以外に"ポケモンコラム"が掲載されており、『ポケットモンスター図鑑』には載っていない情報もある。

2 レアなポケモンの宝庫 サファリゾーンの歴史

数多くのポケモンが生息している「サファリゾーン」。ここは、ポケモンたちにとって、まさに楽園のような場所だ。しかし、ここはポケモンを見せ物にする場所ではない。絶滅寸前のポケモンを保護することもあるが、基本的にポケモンの生態系を乱すことなく、観察をするスペースである。

▲個体数が過多のときのみ、捕獲が許されるのだ。

4 人から人へと伝えられた伝説のポケモンたち

最近の研究では、伝記や伝説の物語に登場するポケモンが存在していることが確認されている。かつては伝説の中だけ、幻のポケモンと思われていたが、サファリゾーンでミニリュウが釣り上げられたことで、存在を信じる研究家が増加した。世界中にある未確認生物のウワサも、もしかするとポケモンたちのことなのかもしれない…。

▲ミニリュウの発見のニュースは、世界中を驚かせた!

以降のゲーム内の図鑑文章では現場がサファリゾーンであることは触れられないが、幻のポケモンと呼ばれていたこと、釣り師によって存在が確認されたことは引き継がれている背景だろう。

ながいあいだ まぼろしの ポケモンとよばれた。わずかだが すいちゅうにすんでいることが わかった。/青→LG
ながらく まぼろしと されていたが さいきん つりあげられて その そんざいが かくにんされた。/ピカチュウ→Let'sGO
もくげきしゃが すくないために まぼろしのポケモンと よばれていた。だっぴした かわが みつかっている。/ ダイヤモンド→X
とある つりしが 10じかんの ファイトの すえに つりあげて そんざいが かくにん された。/ムーン

ながく まぼろしと いわれていた。 ひたいにある ちいさな とっきは せいちょうの とちゅうの ツノ。/
シールド
ドラゴンつかい・ワタルは「りゅうのあな」があるジョウト地方フスベシティ出身だ。普段立ち入ることが禁じられている「りゅうのあな」にもミニリュウが生息していることは、当時秘匿事項だったのかもしれない。


オーキド博士のフルネーム


主人公に最初のポケモンとポケモン図鑑をくれる博士は、「オーキドはかせ」としか呼ばれていなかったが、ユキナリという下の名前があり、オーキドは名字だ。元々このシリーズでフルネームが明かされる人物は稀である。

劇場アニメ第4作『セレビィ 時を越えた遭遇』(2001年)に登場するユキナリという少年が、後のオーキド博士なのではないかと示唆するカットが挿入された。作品中では断定されなかったが、オーキドの下の名と同じであることは今では広く認知されている。

またTVアニメの初期シリーズ(平成版無印)のシリーズ構成・脚本を担当した首藤剛志氏の手掛けた小説版『ポケットモンスター The Animation』(1997年)にもオーキド博士のフルネームとして、オーキド・ユキナリの名が登場する。

アニメ放映と同時期に連載開始した漫画『電撃!ピカチュウ』(1997)にもオーキド・ユキナリ博士として登場している。アニメの内容をベースにしながら、大きく脚色されている作品だが、アニメ本編には登場しないにもかかわらず、オーキドのフルネームは一致している。

このオーキド・ユキナリの名前が初めて登場したのも『ポケットモンスター図鑑』(1996)なのだ。ちなみにマサキのフルネーム、ソネザキ・マサキもここが初出と思われる。

●オーキドユキナリ T大学理学部卒業後、生物学教室研究員を経て、現在はタマムシ大学携帯獣学部教授、現代ポケモン研究の世界における第一人者である。

●ソネザキマサキ ハナダの郊外に、ひとりで暮らすポケモンマニア。自称:ポケモンアナリスト。 

ゲームシリーズでは、第7世代「サン・ムーン」で、彼の従兄弟であるナリヤ・オーキドが、ユキナリの名を呼んだのが初めての登場のようだ。この初期設定が原作公式で、今も活きている証だ。

つまり、当時コミカライズやアニメ化の際、下敷きには当然原作ゲームがあるが、ゲームの中に登場しない情報は『ポケットモンスター図鑑』が参照されていたと考えられる。



ゲーム完成時点の世界観


アニメ化以前のポケモン原作が、当初どのような世界観を想定していたか、その痕跡も伺うことができる。『ポケットモンスター図鑑』p8の序文「はじめに」の冒頭を抜粋する。

 ポケットモンスター(通称ポケモン)の発生は約200万年前といわれています。

 初めて系統立ててポケモンの研究を行なったのは、18世紀後半のフランスの作家、タジリン伯爵です。当時ポケモンは30種類しか見つかっていませんでしたが、タジリン伯爵が記述した詳細なデータとスケッチは、後の研究の基礎となるものでした。

 その後、ポケモンの研究は、フランスを拠点として、イギリス、ドイツ、スペイン、イタリアなど西ヨーロッパ全土に広がり、交通手段の飛躍的な進歩に伴なって、19世紀末には、我が国でも行なわれるようになりました。

発生が約200万年前とされたのは、その年代の地層から発見された化石からの推測であると、カブトプスのページで改めて説明されている。その化石が作中、ニビ博物館に展示されている骨格なのかもしれない。
(前略)カブトプスの化石は6年前に一点だけ発見された。その地層が約200万年前のものであったため、 世界最古のポケモンと考えられている。


タジリンという名前は、ゲーム・ポケモンの生みの親、田尻 智氏のもじりで、当時発見された"30匹"というのは、企画初期のゲーム容量制限による限界のキャラクター数のことだろう。6年という数字が頻出するのは恐らく開発期間の年数だ。スタッフのポケモン開発の苦労と楽しさを、生物分類学の歴史のように膨らませて大げさに書いてみた…というのがこの序文の骨子なのではないかと思う。(詳しくは以前「赤・緑」が完成するまでの流れをまとめた記事を参照頂きたい。ポケモンらしさ-3_デザイン史〜初代開発史編)


次にp130「ポケモンジャーナル 春の号」より「携帯獣概論/Dr.オーキド」の一部を抜粋。

“ポケモン学”の始まりと私が彼らと出会った経緯 
(前略)私はこの学問へ入る以前は、純粋な生物学の道を進んでおりました。「生物はどのように進化したのか?人間はどこから来たのか?」。こうした問を解き明かすのが、生物学であり、進化論と呼ばれるものです。(中略)
しかし、生命の進化の過程というのは検証していけばいくほど、その進化の樹からはずれた生物の存在が明らかになり、新たな生命への謎が深まっていくものです。私にとっては、その対象こそがまさにポケモンたちだったのです。ポケモンの謎を解くことが生命の進化の謎を解くことになり、ひいてはそれが「人間の根源を突き止める結果にもなり得るのではないか」。これが、私がポケモン学に身を投じることになった最大の理由であります。
(後略)

 この序文とオーキドのスピーチから伺えるのは、フランスやイギリスが存在する世界の、我が国=日本が舞台であり、純粋な実在生物の他にポケモンという生物群が新たに発見されたという世界観だ。初代の図鑑にインドぞうという生き物が登場するのは、そのためだったのである。


ポケモンとの共存を急速に促した“モンスターボール”

(前略)あれは確か1925年でしたか、我が国におけるポケモンの祖ニシノモリ教授は、オコリザルの怒りエネルギーを抽出する実験を行なっておりました。しかし、そのときすでに現役引退の歳を迎えつつあった教授は投楽量を間違え、貴重なオコリザルを衰弱させてしまいました。ところが、そのオコリザルは生存本能がそうさせたのでしょうか、そばにあった教授の老眼鏡ケースの中に自らスッポリと身を入れ、胎児のように丸まってしまったのです。この事件をきつかけとしてポケモンの捕獲カプセルの開発が進められ、同時にポケモンを捕獲する方法も確立されたのでした。その後、カプセルは改良を重ね、簡単に高い確率での捕獲が実現できる「モンスターボール」として、現在のように市販される状況となったのです。(後略)


公式サイト・ポケモンだいすきクラブの特集『もやもやドガース世界紀行』(2016)にてニシノモリ教授の研究成果を元に発明されたモンスターボールという記述があり、この部分は活きている設定と言えるだろう。
ニシノモリ
5世という子孫の研究者がアニメ(無印66話)に登場したこともあり、本書の歴史を基準としたと思われる。



アニメ初期≒小説版と現実の動物


ゲーム発売翌年、1997年4月から放映開始したアニメ版では、人とポケモン以外の実在動物を出さない方針にしたようだ。その方針については監督やプロデューサー、いろいろな考えによって決定したのだろう。その考えのズレからか、アニメの初期は少しだけ実在動物が登場してしまっていた。

実在生物の扱いという大きな変更を余儀なくされたとはいえ、"サトシとモンスターボールに入らないピカチュウ"というゲームの仕様に囚われない提案が、ゲーム本篇のポケモンの世界観を広げ、「ピカチュウバージョン」の懐きの表現や連れ歩き、「ブラック・ホワイト」におけるモンスターボールからの解放という問題提起、最新の「ソード・シールド」の世界観にまで影響を与え続けていると言っても過言ではないだろう。


サトシとピカチュウの始まりを生み出し、アニメ初期の脚本をリードした首藤剛志氏は、アニメ最終回までを想定した話数(ゲーム続編ポケモン2の発売まで)のシリーズ構成を組み立てた。その仕掛けとして実在動物がいない理由付けも練り込んでいたようである。

しかし作品人気と、ポケモン2(後の金銀)完成延期、テレビの放送事故、劇場版の想定外のヒットなど、良いことも困難もひっくるめて、全員がベストを尽くした結果、当初の構成どおり終われない作品となってしまったのだ。


後年、自身の連載するコラムでポケモンでの仕事を振り返って、以下のように述べている。

ポケモン以外の動物がいないのもなぜなんだろう?そこで、僕なりのポケモン世界を小説1・2巻に補足して加えた。その補足は終わっていない。3巻目が出ていないのは、『ポケモン』の放映が終わらないと書けない、種明かし的補足が入る予定だからだ。シナリオえーだば創作術 第209回 病院での映画『ポケモン』第3弾

3巻目が出ることなく、首藤氏は2010年に亡くなられた。当初の最終回に向けた構成自体が、死に設定になってしまったのだ。このことは結果的に、初代ゲーム→初期アニメ→それ以降…と2度も世界観の骨子にブレを与え、作品全体の解釈を複雑にしてしまっているともいえる。氏による小説版はアニメシリーズの初期の、現代にしてみれば少し異質な、コアの部分が抽出されたものになっている。そちらを覗いてみよう。


首藤氏による小説版『ポケットモンスター The Animation』(全2巻1997~99)では、主人公サトシの物語の合間に、世界観の補足が語られており、ポケモン研究の歴史については『ポケットモンスター図鑑』(1996) 初出の情報を踏襲しながら、独自の解釈を乗せたものとなっている。独自の部分を示しながら、一部抜粋する。

p87 "本中に関する参考文献2"

わたしが知っているポケモン研究の謎について……

 初めて系統立ててポケモンの研究を始めたのは、十八世紀後半のフランスの作家、タジリン伯爵だといわれています。でも、よく調べてみると、タジリン伯爵の活躍した十八世紀とは、なにも、ポケモン研究だけが系統立てられて始められたわけではありません。ほかの生物も、系統立てられて、研究を始められた時代なのです。(中略)

残されている記録によれば、ポケモンが、モンスターボールやカプセルのような小さいものに入って持ち運びができることがわかったのは、千九百ニ十五年、ニッポンのニシノモリ教授の偶然ともいえるかっき的な発見によるものだとされています(中略)

 さらに、ニッポンのニシノモリ教授にしても、オーキド博士にしても著名なポケモン学者は、ある時期以来、公的な場での研究を引退しています。十八世紀のタジリン伯爵にいたっては、三十種類のポケモンを発表して以来、消息すら絶っています。(中略)
発見されるポケモンの新種も、タジリン伯爵のころで三十種、ニシノモリ教授のころで八十種、現在、公式で百五十一……おそらくその数はどんどん増えていくでしょう。明日、新種が、発表されても不思議のない状況です。
ほかの生き物は、現代になるにつれ、どんどん絶滅していきました。(後略)

タジリン伯爵の発見が「系統立てての研究」とは『ポケットモンスター図鑑』に書かれていたわけではないが、その通りだろう。ニシノモリとオコリザルの事件もそのまま踏襲されている。フランスなど実在の地名もそのまま使われている。
ただ、ポケモン学者がオーキド含め引退、ポケモン以外がどんどん絶滅したという設定は、首藤氏が独自に加えたものである。
謎です。ポケモンは謎に満ちています。だからこそ、人の心をととらえて離さないのです。 
……オーキド博士とはなんの関係のない、名もないポケモン研究家より……
第九十八回全世界携帯獣学会に参加したポケモンアナリスト(分析家)
ソネザキマサキに送られたインターネット・メールよりばっすい
締めくくりはこのように書かれている。この参考文献は、マサキに宛てた無名の研究科からのメールの引用という形で書かれている。タジリン伯爵≒田尻氏が始め、ゲームの登場人物オーキドに研究のバトンを渡した「ポケモンの世界」に対して、首藤氏≒名もないポケモン研究家として、同じくゲームの登場人物マサキに「持論を伝えている形なのだ。作品に対して作品で返す形になっているのが作家らしい。


ところでこの小説は、このように他の動物が絶滅したという設定で、絵が使えず文字だけでポケモンの説明をしなければならなくなったので、かなりややこしい前置きになっている。
<保護者のお父さまお母さまへ>
ポケモンの百文は一見にしかず……ということわざがあります
ポケモンについて知るには、百の説明書を読むより、実物をひとめでも見たほうがいい。という意味ですが、あまりに古いことわざなので、みなさんが知らなくても、けっして恥ではありません。ようするに、ポケットモンスターを見たことがない人に、文章で説明することはむずかしい……というような意味です。
しかし、この本は小説であり図鑑ではありませんので、あえて文章によってポケモンのすがたかたちをご説明いたします。
なお、その説明は世界的にもっとも権威があるOED(オックスブリッジ英語辞書)の1997年版による「従来存在していたポケモン以外の動物」の記載をもとにしております。
たとえば
「カメのようなポケモン」という表現は、0EDにおけるカメ…爬虫類カメ目に属する。……背面と腹面に甲羅をもち、頭と尻尾、二本ずつの手と足を甲羅の中に入れることができる動物の総称。……のような姿をしたポケモン……という意味です。
「カエルのようなポケモン」のカエルという表現は、0EDにおけるカエル·両生類無尾目に属する。……幼生は、おたまじゃくしとよばれ、川、沼などの水辺に多く住む。初夏によく鳴き、冬に冬眠する動物の総称。……のような格好をしたポケモンという意味です。なお…(後略) 
自身のコラムで曰く「子供が楽しめて、大人の読者に馬鹿にされない小説」を目指したようで、当時の与えられた情報(『ポケットモンスター図鑑』)とアニメの方針を照らし合わせて、つきつめて考察したのが、この独自設定なのだろう。

でも、マングース出したの首藤さんの脚本じゃないですか!絶滅とか、小説版書く時に思いついただけなのでは・・・

『ポケットモンスターの平成史~火曜から木曜、そして日曜~』(2019)という、平成末期に放映されたアニメシリーズの特集番組では、ポケモンのことを「地球から遠く離れた惑星に生息しているといわれる不思議な生命体」と表現していた。真に受けるべき定義かどうかはともかく、現在のアニメの世界観は、現実の地球と似て非なる異なるパラレルワールドと考えるのが無難かもしれない。



東京タワー?現在のポケモン図鑑が避ける言葉


北米で英語版のゲームが発売されたのが「Red・Blue」(1998/09)からだ。グローバル展開が作品の言葉選びに与えた影響は大きいだろう。こちらはグラフィックや図鑑説明文が、日本の「青」をベースにしており、初代「赤・緑」のテキストは、国外ではリメイク版の「ファイアレッド」で流用された文章で初めて読まれた。


現在は、実在動物や現実の国名地名は避けるようになっていると考えられているが、実際のところは必ずしもそうではないらしい。

古い世代に書かれた文章でも、新作で流用されることがある。流用されたものは、現在読まれても問題ないと判断されていると言えるだろう。

第6世代「X・Y」以降の文章、つまりスマホ版PokemonHOMEで読めるかどうかをひとつの基準とし、すべての歴代図鑑文章を確認してみよう。


東京タワーHOMEで読めない。北米版ではオーストラリアのエアーズロックに差し替わっていた。東京タワー333m、エアーズロックは地表335mで似た高さのランドマークを選んだのだろう。ポケモンスタジアムなどで英語圏でも東京タワーが登場したようだが、派生ソフトはカウント対象外とする。

ポニータ
からだが かるく あしの ちからが ものすごい。1かいの ジャンプで とうきょうタワーも とびこえる。/赤緑→FR

Its body is light, and its legs are incredibly powerful. It can clear Ayers Rock in one leap./FR


南アメリカHOMEで読めない。英語圏でもSouth America。ジムリーダー・マチスの二つ名「イナズマアメリカン」はLet'sGO!で「ライトニングタフガイ」に変更されている

ミュウ
みなみアメリカに せいそくするぜつめつしたはずの ポケモン。ちのうがたかく なんでも おぼえる。/赤緑→FR



中国:HOMEで読めない。ピカチュウ→Let'sGO!のリメイク時に「東洋」に書換えられた。北米版では in China.→ in the East. 

ウインディ 

ちゅうごくの いいつたえにあるでんせつの ポケモン。ものすごいスピードで はしるという。/赤緑→FR
りっぱな たてがみに みとれる ひとがいるほど どうどうとしている ちゅうごくの でんせつポケモン。/金→HG

ちゅうごくで でんせつの ポケモン。かろやかに はしる そのすがたに とりこに される ものも おおい。/ピカチュウ
とうようで でんせつの ポケモン。 かろやかに はしる そのすがたに とりこに される ものも おおい。/Let'sGO!ピカチュウ・イーブイ


インドぞうHOMEで読めてしまう。サン・ムーンは基本的にすべて新規文章だが、なぜか唯一ライチュウのみ、インドぞうの説明文を流用している。なぜなのか?

ライチュウ
でんげきは 10まんボルトに たっすることもあり ヘタにさわると インドぞうでも きぜつする。/赤緑→FR→サン

ゴース
うすい ガスじょうの せいめいたい。ガスに つつまれると インドぞうも 2びょうで たおれる。/赤緑→FR


地球:すべてHOMEで読める。第8世代にも登場

カイリュー
おおきな たいかくで そらを とぶ。ちきゅうを やく16じかんで 1しゅう してしまう。/赤緑・X
16じかんで ちきゅうを 1しゅうできる。あらしで なんぱしかけた ふねを みつけるとりくちまで ゆうどうする やさしい ポケモン。
/ルビー→Ω 

ホーホー
からだの なかには ちきゅうの じてんをかんじとる きかんを もっているので まいにちおなじ じかんに なると なきごえを あげる。
/ルビーΩ

ハガネール
イワークよりも ふかい ちちゅうに すんでいる。ちきゅうの ちゅうしんに むかって ほりすすみふかさ 1キロに たっする ことも ある。/ルビー
Ω

ダンバル
からだから でている じりょくと ちきゅうのじりょくを はんぱつさせて ちゅうに うかぶ。おしりの ツメを がけに くいこませて ねむる。/サファイア
α

レジスチル
むかし ひとによって ふういんされた ポケモン。からだを つくる きんぞくは ちきゅうじょうにそんざいしない ぶっしつと かんがえられている。/サファイア
α

モンメン
ワタを とばして みを まもる。 たいふうの かぜに ながされ ちきゅうの うらがわに いくことも。/ソード


被食される虫はHOMEで読める。むし、ムシ、ちいさい、ちいさな、など表記はブレる。Let'sGO!ピカチュウ・イーブイにも登場。ただし登場は流用文章のみで、パラス・パラセクトの寄生されているムシに関する文章を除くと、第7世代以降の新規文章は被食者は"むしポケモン"と表記されている。
(2023.08追記)スカーレットでコンパンの捕食するムシが虫ポケモンと書き換えられた。

ポッポ
たたかいは すきではない。くさむらの なかに かくれて ちいさい むしなどを とらえる。/赤緑
くさむらで はげしく はばたき すなけむりを おこして とびでた ムシを とらえて たべる。/クリスタル

オニスズメ
くさむらの むしなどを たべる。はねが みじかいために いつも いそがしく はばたいている。/青→LG→Y
みじかい ハネを はばたかせ くさむらの ムシを おいだしては みじかい くちばしで ついばむ。/金→HG

オニドリル
ほそながい くちばしを じょうずに つかって じめんのなかの ちいさな ムシを つまみだし たべてしまう。/銀→SS

コンパン
おおきな きのしたに すんでいて むしなどを たべて いるらしい。よるは あかりのそばに やってくる。/青→LG

コンパン
りょうめは レーダーきのうを そなえている。くらやみに かくれた ちいさなムシも つかまえてたべる。/金→HG
ぜんしんから どくが にじみでる。くらくなると あかりに むらがった ちいさなムシを とらえて たべる。/銀→SS
全身から 毒が にじみでる。 暗くなると 灯りに 群がった 小さな 虫ポケモンを 捕らえる。/スカーレット(2022)
 

エサにする ちいさな ムシは よるにしか かつどう しないので それまで きのあななどで ねむる。/クリスタル

モルフォン
やこうせいで よるに かつどうを はじめる。がいとうの あかりに さそわれ あつまったちいさな むしを このんで たべる。/R→Ω

マダツボミ
ちいさい むしを とらえて たべる。あしの ねっこを つかい すいぶんをほきゅうすることも あるらしい。/青→LG
おんどが たかく しつどの ある ところを このむ。ツルを つかって ちいさなムシを とらえて たべる。/ピカチュウ→Let'sGO!

タッツー
すいめんから いきおいよく スミをはっしゃして とんでいる ムシをうちおとす ことが あるという。/青→LG→X
ちいさな ムシや いわばの コケを たべる。かいりゅうが はやく なると しっぽを いわばやサンゴに まきつけ ながされない ように する。/R→Ω

ヤンヤンマ
おおきな りょうめで 360どあらゆる ほうこうを みわたしてエサとなる ムシを さがしている。/銀→SS

クヌギダマ
ぶらさがったまま エサとなるムシが とんでくるのを まっている。じぶんじしんは あまり うごかない。/銀→SS

パラス・パラセクトの"ムシ"は、キノコの寄生宿主を表す単語のようだ。その"ムシ"単体の正体や生態は明かされていない。

パラス
とうちゅうかそう という キノコが ムシを あやつっているのだ。 ムシの いしは むしされる。/ウルトラムーン

パラセクト
ムシの からだより おおきくなったキノコの いしで かつどうする。しめった ばしょを このむという。/青→LG
くらくて しめった ばしょをこのむ。それは ムシではなく おおきくなった せなかの キノコの このみなのだ。/金→HG
ムシから エキスが すえなくなると せなかのキノコは ムシの タマゴを みつけて ほうしを うえつける。/クリスタル

ムシの ほうは ほぼ しんでいて ほんたいは せなかの キノコだ。 もげると もう うごかなくなる。/ウルトラサン
ずっと エキスを すいつづけられ もはや ムシではなく せなかの キノコが かんがえているようだ。/ピカチュウ→Let'sGO!


HOMEで読めるのは形状の例えのみ
『ポケットモンスター図鑑』では魚・小魚を捕食している描写があったが、第7世代以降の新規文章は被食者として"さかなポケモン"が頻出する

シャワーズ
みずべに すむが しっぽには さかなのような ひれが のこっていてにんぎょと まちがう ひともいる。/青→LG

ハンテール
さかなの かたちをした シッポで おびきよせおおきな くちで エサを まるのみ する。ヘビのように からだを くねらせて およぐ。/S→α
ひかりの とどかない しんかいにせいそく。こざかなに にた しっぽをひからせて えものを さそいだす。/FRLG→X
しんかいの つよい すいあつに たえられるようにとても ふとく がんじょうな せぼねを もつ。こざかなに にた しっぽの めが ひかる。/E
しんかいに せいそくする ポケモン。こざかなの かたちをした しっぽで えものを おびきよせ つかまえる。/ダイヤモンド→Y

まっくらな しんかいに せいそく。しっぽを いきものの ように うごかして えものを さそう。/HGSS

豪華客船サントアンヌ号の厨房で、"さんまのしおやき","したびらめのムニエル"という魚料理が登場したが、リメイクのLet'sGO!にて"うずしおスシ"などに変更されている


サンゴHOMEでも頻出する刺胞動物である。サンゴとサニーゴは別の生き物で、頭にサンゴを生やしているポケモンだということがわかる。「オメガルビー・アルファサファイア」では、ダイビングで潜った際、戦闘背景にサンゴが表示されており、目視できるヒト・ポケモン以外の動物といえる。

タッツー
ちいさな ムシや いわばの コケを たべる。かいりゅうが はやく なると しっぽを いわばや サンゴに まきつけ ながされない ように する。/ルビー→Ω
サンゴの かげに すみかを つくる。きけんを かんじると くちから まっくろい スミを はいて にげる。/ダイヤモンド→Y

シードラ
せびれに さわると しびれてしまう。ねむるときは ながされないように シッポを さんごに まきつける。/ピカチュウ→Let'sGO
サンゴの えだの すきまに もぐって ねむる。シードラに きづかず サンゴを とろうとしてどくの トゲに さされてしまう ことが ある。/ルビー→Ω

サニーゴ
サンゴの えだは たいようの ひかりを あびるとなないろに キラキラ かがやき とても きれい。おれても ひとばんで もとどおりに はえてくる。/ルビー→Ω
あたたかい みなみの うみに せいそくする。うみが よごれると うつくしい サンゴのえだは いろが くすみ ボロボロに なってしまう。/エメラルド
みなみの きれいな うみをこのむ。よごれた うみだと サンゴの えだは いろがくすみ ボロボロになるのだ。/ブラック2・ホワイト2

サンゴのえだが あたまに はえる。 かなり かんたんに おれるけど みっかくらいで もとに もどるよ。/サン

ラブカス
はんしょく シーズンには たくさんのラブカスが さんごしょうに あつまりかいめんが ピンクいろに そまる。/ファイアレッド→Y
あたたかい うみの サンゴしょうが すみか。 サニーゴのえだの あいだで ねむるのが とくに おきにいり。/ウルトラムーン

ヒドイデ かいていや かいがんを はいまわる。 サニーゴの あたまに はえる サンゴが だいこうぶつだぞ。/ムーン


プランクトン第8世代でも新規文章で登場する。したがって現在HOMEやゲーム中では読むことのできない、オムナイトやメノクラゲの食性に今でもプランクトンが含まれると考えてよいだろう。

メノクラゲ
水晶のようにすき通った目玉から、不思議な光のビームを発射する。プランクトンを餌としており、体の99%が水でできている。/ポケットモンスター図鑑

オムナイト
おおむかし かいていを およいで プランクトン などを たべていた。ときどき かせきが みつかる。/クリスタル

カラナクシ(ひがしのうみ)
かいちゅうの プランクトンを くう。 きれいな うみに すむ カラナクシほど あざやかな たいしょくを している。/サン

トリトドン(にしのうみ)
めに みえない プランクトンが おもな エサ。 りくに あがってくるが りゆうは まだ わかっていない。/ ムーン

スターミー
からだを こうそくで かいてんさせ うみを およぎながら ちいさな プランクトンを きゅうしゅうする。/シールド


微生物:HOMEで読め、流用文章だけでなく第7世代の新規文章でも登場する

アメタマ
つまさきから あぶらが にじみでて いるのでみずの うえを すべる ように あるけるのだ。いけや みずうみの びせいぶつを たべている。/ルビー→Ω

ジーランス
1おくねんの ながい あいだ まったく すがたがかわらずに しんかいで くらしていた ポケモン。はの ない くちで びせいぶつだけを たべる。/ルビー→Ω
しんかいちょうさちゅう ぐうぜんに はっけん された。 はが たいかし すうようにして びせいぶつを とる。/ムーン


バクテリア・細菌共生バクテリアの存在がHOMEで読める。細菌表記で第8世代でも登場。

ランターン
しんかいのほし と よばれる ポケモンだ。しょくしゅの なかの バクテリアと たいえきをかがくはんのうさせる ことで ひかりを つくる。/ルビー→Ω
しょくしゅに すむ バクテリアが ランターンの たいえきを すうとき つよい はっこうげんしょうが おこる。/ウルトラサン

マッギョ 
ひがたが すみか。どろに すむ さいきんに よって でんきを つくる きかんが はったつした。/ソード


ウィルスHOMEで読める。ウイルスの表記ブレもあり。ウィルスは生物と定義されないが、宇宙ウィルスがデオキシスに変異するのは、細胞のウイルス起源説をモチーフとしているのかもしれない。第二世代から現役で"ポケルス"という小さな生命体も存在するとされる。

デオキシス
レーザーを あびた うちゅうウィルスの DNAがとつぜんへんいを おこして うまれた ポケモン。むねの すいしょうたいが のうみそ らしい。/ルビー→Ω
うちゅうウィルスから たんじょうした ポケモン。ちのうが たかく ちょうのうりょくを あやつる。むねの すいしょうたいから レーザーを だす。/サファイア→α
いんせきに ふちゃくしていた うちゅうウイルスの DNAが へんいして うまれた ポケモン。/ダイヤモンド→X
うちゅうウィルスが とつぜんへんいを おこして ポケモンに なった。 オーロラの ちかくに あらわれる。/ハートゴールド→Y
うちゅうウィルスが レーザーを あびたときとつぜんへんいを おこして ポケモンに なった。すばやい うごきに すぐれた からだの かたち。/エメラルド

腐葉土HOMEで読める。地球と似た生態系のサイクルを前提とする世界観であれば、落葉を腐らせ分解者となる微生物は存在するだろう。

キノココ
ふかい もりの しめった じめんに せいそく。おちばの したで じっとしていることが おおい。おちばが つもって できた ふようどを たべる。/ルビー→Ω

もりの しめった ふようどが だいこうぶつ。ながあめの あと もりに はいると キノココがたくさん あつまって ふようどを たべているよ。/エメラルド


ハチミツHOMEでも読めてしまうがミスの可能性がある。ヒメグマの説明文は、「ルビー」のリメイク「オメガルビー」でわざわざ"ミツ"に直そうとした気配があるが、共用文章のはずの「アルファサファイア」では"ハチミツ"のままゲームに実装されたようだ。
英語ではいずれもhoneyなので影響はない。

ヒメグマ 
ハチミツの しみこんだ てのひらを なめている。ヒメグマの ハチミツは くだものと スピアーの あつめた かふんが ブレンドされて つくられる。/RSE→α
ミツの しみこんだ てのひらを なめている。ヒメグマの ミツは くだものと スピアーの あつめた かふんが ブレンドされて つくられる。/Ω

いつも ハチミツを なめている。てのひらには ミツが しみこみ なめると あまい あじがする。/クリスタル
あまい ミツを てのひらに しみこませて いつも なめている。ヒメグマによって あじが ちがう。/ダイヤモンド


以上。
動物や生き物は、少なくとも人間とポケモン以外に存在するだろう…しかし

未だ居座るインドぞうに困惑しかない。

初代におけるインドぞうの元ネタはこちらにまとめてある。
ポケモンらしさ-3_デザイン史〜初代開発史編


ポケモン全世代図鑑として、スプレッドシートに歴代の図鑑文章をまとめてあるので、興味がある人は、確認してほしい。


備考

ポケモン図鑑の説明テキストは、バージョンごとに記述が異なることがあり、例えばフシギダネには累計8種が用意されてきた。

うまれたときから せなかに しょくぶつの タネが あってすこしずつ おおきく そだつ。(赤・緑/ファイアレッド/ソード)
うまれたときから せなかに ふしぎな タネが うえてあって からだと ともに そだつという。(青/リーフグリーン/X)
なんにちだって なにも たべなくても げんき! せなかのタネに たくさん えいようが あるから へいきだ!(ピカチュウバージョン/Lets's GO!ピカチュウ・
Lets's GO!)
せなかの たねの なかには えいようが たっぷり。たねは からだと いっしょに おおきくなる。(金/ハートゴールド)
うまれたときから せなかに たねを せおっている からだが おおきくそだつごとに おおきくなる。(銀/ソウルシルバー)
うまれて しばらくの あいだ せなかの タネに つまった えいようをとって そだつ。(クリスタル/シールド)
ひなたで ひるねを する すがたを みかける。たいようの ひかりを いっぱい あびることでせなかの タネが おおきく そだつのだ。(ルビー・サファイア・エメラルド/オメガルビー・アルファサファイア)
うまれてから しばらくの あいだは せなかの たねから えいようを もらって おおきく そだつ。(ダイヤモンド・パール・プラチナ/ブラック・ホワイト・ブラック2・ホワイト2/Y)

『ポケットモンスター図鑑』はミュウの存在が(仄めかしはあるが)伏せられているので150種だが、テキスト化して掲載した。赤緑の文章が漢字化されている部分がある。

生まれたときから、背中に植物の種があって、少しずつ大きく育つ。動物か、それとも植物の仲間に入れるか、研究者のあいだでは、もう6年も議論が戦わされており、いまだに決着をみない。(ポケットモンスター図鑑)

しかし、ブラック・ホワイト(2010年)以降に実装された日本語漢字表記版とは、読点や「タネ」などの かなカナ表記が、やや異なることもある。今回のリストでは、新旧の比較が目的だったため、ひらがな版統一としている。

生まれたときから 背中に 植物の タネが あって 少しずつ 大きく 育つ。(ソード・漢字) 

『公式ファンブック』の説明文も参考までに載せた。ゲームフリーク自身による文章かどうかは定かではない。

生まれたときから、背中に植物の種を持っているのが最大の特徴だ。このポケモンが植物なのか、それとも動物なのか、謎である。(ポケットモンスター公式ファンブック)

ちなみに、初代からいて他の地方にも多く出る、ピカチュウ、ズバット、ゴルバット、コダック、ゴルダックが最も多く重複しない19種のゲーム内図鑑テキストをもつ。

XY以降、公式サイトにしか記述されない情報が存在したので、そちらもリストに追加中。1/11現在、図鑑文章の存在しないメガシンカなどを中心に加えてある。


最後に『ポケモン公式ファンブック』(1997)のポケモンコラムで、紹介しなかった1と2を載せておく。

1ポケモンは何を食べているのか?

▲エサの捕獲方法はポケモンごとにちがう。

ポケモンの生態系には、まだ判明していない項目が多々あるのが現状である。食糧もその一つであるが、トサキントやポッポなどの 一部のポケモンは、食糧がなんであるのか確認されている。これらを例に推測していくと、どうやらポケモンたちの世界にも、食物連鎖が働いているらしい。さらなる研究が待たれる分野だといえる。



3ポケモン研究の偉人たち

オーキド博士や、マサキなど、ポケモン研究に人生を賭ける良心的な生物学者は多い。が一方では、遺伝子を操作して新しいポケモンを誕生させようとする研究家もいるようだ。これについては、偉大な研究であるか、危険な研究であるか、ポケモン学会でも物議を呼んでいる。

▲遺伝子操作は、生態系を崩壊させる危険が大きい。


 

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