2016年8月26日金曜日

20th祝いつくす解説 どくタイプ 

ポケモン20thを祝いつくす動画 どくタイプの解説です。ロゴデザインはサトウマミさん。

 どくタイプは「毒」という単語の時点で既に危険で、確実に我々に危害を加える存在です。あくタイプのなかった初代ではロケット団など敵のポケモンに多くついていたタイプで、全どくポケモンのうち、約半数が初代から登場しているという特徴があります。


動画コンセプト


その「危険性」「決して触れたくない嫌悪感」などをどくタイプならではの魅力として動画のテーマにしたかったのですが、単に不快な動画になってしまわないか多少不安ではありました。また目玉となる伝説や幻のポケモンが一匹もいないため、動画にすると華やかさに欠ける可能性もあり、どう魅せようか頭を捻ったタイプです。そこで音楽面の演出で何かできないか考えました。

 今は無くなってしまいましたが、以前はゲームで毒状態にかかるとフィールドで移動中もダメージが蓄積していきました。その際の毒ダメージ効果音を使ったBGMをKagem(なっとくP)さんに作ってもらいました。毒タイプのコンセプトを魅せるのに、この中毒性高いBGMが功を奏したと言っても過言ではないでしょう。

 毒といっても様々で、種類は大きく自然毒・人工毒の2つにわけられます。動画の前半は、捕食のため、生物が身を守るために持つ自然毒を中心に構成しています。


自然毒


出だしはキノコ毒。毒キノコによる中毒の症状は様々で、間違えて経口摂取すると、嘔吐、腹痛、下痢、痙攣、昏睡、幻覚などの症状を生じ、最悪の場合死に至ります。本来のキノコは胞子などによる害はありませんが、ポケモンのキノコ類は恐ろしいですね。カントー地方の女の子には見慣れないタマゲタケ、擬態の罠にひっかかってしまいました。彼女の見た幻覚のようなイメージで動画をまとめています。一連のアニメーション担当はクロスミさんです。

まず刺系でまとめてます。攻撃的に毒針を逆立てる変化を2コマ程度でさせています。


ニドラン♂はみってぃさん、♀はあさひさん担当。

ニドリーノ、ニドリーナは壱一さん担当。

ハリーセンのモデル、ハリセンボンは毒を持ちませんが、近縁種のフグ毒のイメージでしょうか。膨らんでトゲをたてる動きを545さんにお願いしました。

ロゼリアのモチーフ、バラもトゲ自体に毒はありませんが、鋭く、刺さった場合、消毒を怠れば細菌感染などで腫れることが多々あります。担当はぐれにゃんさん。


 毒虫系、サソリクモ・ムカデの消化液・毒液強い殺菌能力をもつ消化液を捕食時に獲物へ注入します。捕食対象である無脊椎動物に特化した神経毒なので、現実の虫であれば人間に影響を持つほどのものは非常に稀です。スコルピは成美茅乃さん担当。

イトマル、アリアドスは庭石菖さんに体の節々をパーツごとに分けて描いて頂いたものを動かしています。

触覚まで細かく蠢くフシデは秋次さん担当。ホイーガは鳥類さんが滑らかな回転をフルアニメーションで描いてくださいました



 ハチ毒
は様々な物質の複雑な混合物で別名「毒のカクテル」と呼ばれています。動物組織を酵素によって破壊、速やかに皮下組織に拡散、血管系を通じて全身を巡り、免疫系や神経系の情報処理機構を攪乱。それによって激しい痛みや免疫系の混乱による急性アレルギー反応を引き起こします。

ハチ刺症は二度目に刺されるとアナフィラキシーショックで死に至る危険性もあります。一度刺すと針が抜けて死ぬと言われているのはミツバチの話でスズメバチは何度でも刺してきます。特にメガスピアーの鋭い目はスズメバチをモチーフとしているでしょう。メガシンカシーンには目の変形過程を挿入して頂きました。担当はパーカーさん。


今回毒タイプの動画にはいませんが、モルフォンやドクケイルのような毒蛾の毒性は、実際は鱗粉ではなく非常に細かい毒針毛です。直接触れなくても風下にいるだけで炎症の被害にあうことがあり、幼虫の脱皮殻、死骸にも注意が必要です。成虫も毒があり、卵塊も成虫の体毛に覆われています。

グレッグルとドクロッグのモチーフ、ヤドクガエルが持つのはアルカロイド系の神経毒で、20μgで人間の大人を死に至らしめる全生物中最強の毒と言えます。あまりにも毒性が強いので、毒と接触したペーパータオルに触れるだけでも鶏や犬は死んでしまうとか。野生種は餌としてアリやダニを摂取して体内で毒を生成しています。グレッグルは御門まのさん、ドクロッグはあぎさん担当です。

ハブネークはハブやマムシのクサリヘビ科の出血毒でコブラとは毒の種類が違います。血液のプロトロンビンを活性化させ、血管系の細胞を破壊、血圧降下、体内出血、腎機能障害、多臓器不全等により絶命に至らしめます。ノーマルタイプにも登場していましたが、ザングースと対になるような斬撃を尻尾の刀で繰り出すカットになっています。担当は雨猫さんです。

アーボ・アーボックの名前の由来はボア、コブラの英語綴りの逆さ読みです。ボアには毒はないので、両者ともコブラの毒性を持つと仮定します。神経毒で、神経伝達を攪乱、骨格筋弛緩・収縮。横隔膜が麻痺すると呼吸困難に陥り絶命します。キングコブラは一度の攻撃による毒液の量が多く、一噛みで象をも殺すと言われています。動画では威嚇行動をとらせています。図鑑説明文にはないですが、アーボの尾をガラガラヘビの尾の脱皮殻のように解釈して震わせています。こげつさん担当。

アーボックはお腹の模様に地域差があるという図鑑文章を再現。ポケモン初期のゲームフリークによる解説イラストを参考にサトウマミさんが5種類描いてくださいました。


食虫植物が持つ毒というのは消化液のことでしょう。ウツボカズラは壺のような形で落とし穴式の捕虫器で、口の周囲はツルツルになって虫が滑り落ちやすくなっています。虫を誘う蜜のような透明な液体には消化液が含まれ、虫は次第に消化され袋の内側から吸収されます。

マダツボミは消化液の実験をイメージしていて一瞬顔が丸フラスコになるのが面白いです。ウツドンは「てあたりしだいに うごくものを のみこむ」という図鑑の説明文の様子を、ウツボットは「ジャングルの奥地に ウツボットばかりいる地帯があって 行ったら2度と帰ってこれない」という恐ろしい伝承を再現しています。

胃袋そのものがモチーフのゴクリン・マルノーム、消化液として胃液が武器になっています。強酸性で食べものの消化、雑菌の無効化など免疫の働きも担っています。胃潰瘍のようにストレスなどで過剰に働き自身の粘膜まで溶かしかねない一面も。生き物の多くは体内にも毒を抱え、毒をもって毒を制しているのです。

名前の由来でもある、ゴクリという擬音、丸飲みの様子が表現されています。捕獲時よく所持しているアイテム「おおきなしんじゅ」を飲み込むゴクリンとそれをさらに飲み込んでしまうマルノームです。マダツボミ系列と合わせ5種をグラフィカルにまとめてくださったのは、ばねさんです。


クズモーは海藻に擬態し潜む様子をいす太さんが描いてくださいました。

ドククラゲはアマギさん担当で、触手の動きをフィーチャーしています。クラゲは毒針を射出する刺胞を触手に持ち、海を泳ぐ人への被害も大きいです。中でも目を有するクラゲ、キロネックスは「殺人クラゲ」と呼ばれるほど強い毒をもちます。

イバラの鞭を振るう、ローズ+マスカレイドなロズレイドは ぐれにゃんさんが担当。
モロバレルは擬態のつもりが、もろばれ、という名のとおりの仕草をミックーさんが担当。


 動画では、毒性そのものより悪臭による臭害にシフトしていきます。

クサイハナ・ラフレシアの花畑。担当は小唄さんです。ラフレシアは実在する"臭い花"で、花弁は直径90cmにも達する世界一大きい花としても知られています。花粉を運ぶハエを呼寄せるために、肉のような色で死肉や獣糞などの腐臭を発しているため、調査隊が発見した当時は人喰い花ではないかという迷信もあったそうです。開花してから3~5日程度で枯れてしまうラフレシアを見つけるのはラッキーで、「幻の花」でもあります。ポケモン図鑑のラフレシアの説明文には、アレルギーを起こす毒花粉をばら撒くと記述されています。花粉の害としては花粉症などのアレルギーもありますね。

スボミーもまた花粉症をひきおこす花粉をばら撒く毒タイプとしてカテゴリーできます。担当はロゼリア ロズレイドと同じく ぐれにゃんさん。


 スカンプー、スカタンクのモデルであるスカンクも悪臭を放ちますが、その正体は肛門傍洞腺から放出される分泌液です。主成分はブチルメルカプタン(C4H9SH)で、放出する前に肛門部を相手に見せるなど警告動作を行ないます。なんと4〜5m離れていても命中するそうです。蓄えは5〜6回分で、再充填におよそ1ヶ月程度かかると聞くと、もはや だいもんじやハイドロポンプ並の技ですね。メリノさん担当でその臭さを表現してもらいました。


人工毒


動画は人工毒モチーフに移行します。進化系などの強力な毒のイメージも後半に集めました。

ベトベター、ベトベトンの主成分はヘドロ、水底に沈殿した有機物などを多く含む泥です。主に、産業廃棄物など有害物質の混ざった汚泥で、高濃度のダイオキシン類が検出されることが多いです。田子の浦港ヘドロ公害などが有名で、『ゴジラ対ヘドラ』に登場する公害怪獣ヘドラもこの時代背景を風刺しています。日本の高度経済成長と表裏にあった公害問題として、多くの創作でヘドロに警鐘をもたらす人格が与えられています。ベトベトンは雨猫さん担当。


ヤブクロン、ダストダスはゴミがモデルという衝撃的なデザインでした。しかし人間が生活すれば必ず生じるものであり、人とポケモンの関係がクローズアップされたBWに登場する新種の中でも、特に人と切っても切れない関係にある最も身近なポケモンと言えるでしょう。ゴミ処理問題から人類は目を逸らすことはできません。ベトベター、ヤブクロン、ダストダスはオニモツさんがループアニメーションを描いてくださいました。

 産業の拡大や自動車の増加が深刻化した公害として毒タイプの技「スモッグ」がありました。排気ガスなどが、紫外線により光化学反応を起こして変質した光化学オキシダントが主成分です。今回の動画にはいませんが、ゴースは「ガスじょうポケモン」であり、ゴースト≒幽霊の進化前で、インドぞうをも殺す心霊現象正体(進化前)は毒ガスであった、という科学とオカルト半々の面白い解釈になっています。

 ドガースの名前の由来は毒ガス、マタドガスは「またドガース」の語感の他『マスタードガス』をかけていると思われます。生きるための捕食や身を守るための自然毒や、人間の発展と表裏の関係にある公害などと違い、明確に他者を殺傷するための化学兵器をモチーフとした異質なポケモンです。マスタードガスはゴムでさえ浸透し、タンパク質やDNAを傷つけ、皮膚や粘膜を冒し、細胞分裂を阻害、皮膚がただれてしまう他、発がん性ももちます。ドガースの毒ガス噴出アニメーション、マタドガスは おとならPが描いて下さいました。
 ドガースは今回の動画のBGMでも大きく取り上げられており、後半はBW2のタチワキジムのBGM「DOGARS ドガース!」のアレンジで構成されており、ポケモン音頭のフレーズ「ドッドッドッガースドドッガドッ」を挿入するなど、ドガースづくしです。おとならPによる
口パクもばっちり。


関連してどくタイプの使い手にも登場。タチワキジムホミカはオニモツさん担当「どくのことなら なんでもござれ」なセキチクジムのキョウ、アンズ親子はニコロナさん担当


ラストは毒タイプでも強豪枠として描写に力の入ったポケモンたちを。

メガシンカで耐性を得て、どくどくが必中になるなど強化されたメガフシギバナ。通常フシギバナはくさタイプの方に出ますが、メガシンカの演出が入れられなかったので、毒の方でメガフシギバナを出すことにしました。どくどく発動のイメージは星野ほしこさん担当です。

ドラピオンは自動車もスクラップにするという力自慢な描写で強調。かきのはさん担当。

ペンドラーはむしタイプとしても魅力的ですが、どくタイプの華としてこちらに。ハードローラーな丸まった形態から着地、爪をワシワシと動かします。545さん担当。

ドラミドロはリーフィーシードラゴンモチーフの待望のどく・ドラゴンポケモン。タンカーをも腐らせ沈めるその毒の強さを、おしゃれに表現しています。担当はいす太さん。

サンムーンではがねやどくタイプでさえ毒に冒す"ふしょく"という特性が登場しました。活躍の場が拡がりますね!果たしてどくタイプの伝説や幻のポケモンは登場するでしょうか?

次回は、エスパータイプを解説します。

0 件のコメント:

コメントを投稿

はじめに

このブログについて ポケットモンスターシリーズの世界観について、1人のファンが非公式に考えたことをまとめていくブログです。自身の意見の全容がわかるように置いておくのが開設理由です。 主に オリジナル である ゲーム (株式会社ゲームフリーク開発の本編) を中心 に、派生ゲ...